◆称賛を浴びる一方で赤字まみれの惨状
そして、2001年にオープンした再開発ビル「アウガ」は、コンパクトシティの象徴として、地元のみならず全国の自治体からも視察が押し寄せるほど注目された。
市の郊外から移転した図書館には、年間600万人が来館し、テナント部分には10代から20代向けのテナントが多数入店し、さらに地下には昔ながらの魚介や野菜を扱う市場が入っており、中心市街地活性化の成功事例として、マスコミにも紹介された。
自治体関係者や政治家、地方経済の研究者やコンサルタントなども、青森のコンパクトシティを成功事例として持て囃した。しかし、そうした賞賛を浴びた日々は長くは続かなかった。
華やかな表舞台に反して、実際には開業当初から大幅な赤字だったのだ。開業初年の2001年の売上高は計画を大幅に下回り約23億円であり、約2億5000万円の赤字だった。2008年になると第三セクター・青森駅前再開発ビルが巨額の債務を抱え、経営難に陥っていることが明らかになる。
すでに約23億円まで債務が膨れ上がっており、筆頭株主だった青森市は金融機関に対して、この債務を約8億円で買い取ることを要請。事実上の債権放棄を金融機関側は受け入れざるを得なくなった。
2009年の市長選挙では、コンパクトシティを推進してきた佐々木誠造氏が落選。新人の鹿内博氏が市長となり、計画の見直しが図られる。青森市は救済策として、2010年には駅前再開発事業の助成金として約2億円を交付するが、アウガの経営悪化は止まらず、2015年度には再び約27億円の赤字に陥った。翌2016年には資金回収をできなかったことを理由に鹿内氏が市長を引責辞任する事態となった。