国内

コンパクトシティ構想 先進地だった青森はなぜ失敗したか

2001年にオープンした青森の再開発ビル「アウガ」

2001年にオープンした青森駅前の再開発ビル「アウガ」

 人口減少や少子高齢化に悩む地方自治体が、徒歩で移動できる都市の中心部に住宅や商業施設、行政機関などを集積させようという「コンパクトシティ」構造。国も支援に乗り出して注目されてきたが、どうも成功事例が見当たらない。神戸国際大学経済学部教授の中村智彦氏が、早くからコンパクトシティを目指しながらも頓挫した「青森市」の現状をレポートする。

 * * *
 一世を風靡した「コンパクトシティ」構想だが、その後、評判は芳しくない。特に先進地として名を馳せ、多くの人が視察に行われた青森市は、すっかり「失敗事例」の烙印を押されてしまった感がある。青森市の今はどうなっているのだろうか。

◆青森市のコンパクトシティを目指した「3つの問題」

 青森市がコンパクトシティという発想を「青森市都市計画マスタープラン」に盛り込んだのは、1999年。まだ、地方の人口減少問題があまり着目されていない時期だった。しかし、青森市ではすでに3つの問題を抱えていた。

 まず、地方財政の急激な悪化で、これ以上市街地が拡大すれば、充分なサービス提供が不可能になるという懸念だ。次に、下水道の整備の困難さ、そして除雪の問題だ。こうした中で、郊外開発の抑制と、都市中心部の再整備によって集住を進めることによって、行政コストを抑制し、持続可能な状況を維持しようという発想だ。

 こうした発想は、現在でも間違ってはいない。しかし、その実行にあたっては様々な問題が発生した。

◆駅前再開発計画がバブル破綻で頓挫

 青森駅は「青函連絡船」の発着場として、東北の玄関口であった。駅前には、魚介類や農産品を売る市場が形成され、賑わってきた。しかし、1970年代になると老朽化が問題となり、再開発の話が持ち上がった。その後、1990年に再開発組合が認可され、1992年に第三セクター・青森駅前再開発ビルが設立、総事業費約185億円という駅前一等地の商業ビル建設が動き始めた。

 計画当初は、中核テナントとして西武百貨店が進出を表明していたが、バブル景気破綻の余波で、開業前の1994年に撤退を決定した。

 その空きスペースを埋めるため、市が保留床を購入し、図書館、多目的ホールや男女共同参画プラザと駐車場を整備し、さらに青森駅前再開発ビルが残りの保留床を買い取ってテナントに貸し出す手法を採った。結果的に、総事業費約185億円のほとんどを市が負担することになった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
理論派として評価されていた桑田真澄二軍監督
《巨人・桑田真澄二軍監督“追放”のなぜ》阿部監督ラストイヤーに“次期監督候補”が退団する「複雑なチーム内力学」 ポスト阿部候補は原辰徳氏、高橋由伸氏、松井秀喜氏の3人に絞られる
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン