人の動線に配慮するなどの合理性を重んじ、古い習慣にはとらわれすぎない。そうした高尾氏の意識が、中庭に植えられた紅梅と白梅にも見受けられると竹内さんは続ける。
「2本の木が、一対になって植えられる構図は、京都御所の紫宸殿にある『左近の桜、右近の橘』になぞらえたものです。高尾氏は著書『宮殿をつくる』の中で、《左近の桜や右近の橘は典雅な宮廷伝統だが、一面長い歳月の経過によるマナリズム(注:マンネリズム)がまとわりついている。宮殿そのものが新しい発想によっているのだから、これもこの際考え直していいのではないか》と記しています。そうした考えで、あえて桜と橘ではなく、紅梅と白梅を植えたのです」
儀式当日の中継では国内外の要人が見守るなか、松の間で宣明される天皇陛下とともに、白那智の玉石が敷き詰められた中庭の紅梅と白梅も映るだろう。それらが、国民とともに歩む、親しみのある皇室を象徴する意味合いが込められたものだったと知ることで、新天皇の即位の慶びも、さらに深く感じられるのではないだろうか。