料理が盛り付けられるのは、川口さん考案の特製プレート。ご飯などの炭水化物、肉・魚・卵などのたんぱく質、野菜や海藻などのビタミン類、食物繊維と、栄養素別に1食分の必要摂取量がのる大きさに分かれている。料理を見て食べることで、どんなものをどのくらい食べるとよいか、体得できるのだ。
「栄養バランスのよい食事をきちんと食べると、体が喜ぶ。そして気力がわいてくるのです。これは食事をないがしろにしていると気づけません。私たちの食事会は週1回だけ。参加者の多くが、それ以外はひとりで食べているのでしょう。それでも孤食のリスクをカバーできていると思うのは、おいしく味わって心が動き、体が喜ぶことで、“食べる意欲のスイッチ”が入っているから。参加者一人ひとりが食にちゃんと向き合っているのがわかるのです」
高齢になると支援されることが多くなり、何かと受け身になりがちだが、食べることだけは、最終的に本人にしか守れないと、川口さんは言う。
「孤食の最大のリスクは食べる意欲をなくすこと。いくら周囲が食べ物を差し出しても、“しっかり食べよう、がんばろう”というスイッチを本人が入れなければ、身になりません。そのためにも、ひとりよりは誰かと一緒に食べた方がよいですね。おいしさに感動すると、誰かに話したくなる。またそれぞれの食には必ず物語があるから、話は尽きません」
今、食事を出す地域コミュニティーも増えつつあるという。それは食を介すと会話が深まり、つながりが強くなると理解され始めたからかもしれない。老親の孤食が心配なら、家の外に目を向け、探してみるとよいだろう。
「ただ、ひとりが好き、人づきあいが苦痛という人もいます。“ひとりで食べない”にこだわるのではなく、自分の食に向き合えればよいのです。心躍るようなおいしいもの、栄養バランスの取れた食事を、ゆっくり“楽しむ孤食”を支えてあげてください」
※女性セブン2019年10月31日号