これまで各局は日本シリーズの放映権を得るために、シーズン中からさまざまなチームの中継実績を重ねるなどの努力を重ねてきました。しかし、高額な費用がかかる上に、それに見合う視聴率が得られず、レギュラー番組の休止や放送時間変更という問題点もあるなど、いよいよ地上波ゴールデンタイムでの放送が厳しくなっています。
実際、今年の日本シリーズは第4戦で終了しましたが、ある日テレ関係者から「もし第5戦を放送していても結果は厳しそうだったから、(ジャイアンツが0勝4敗で)負けてホッとしたところもある」という声も聞きました。また、第6戦放送予定だったTBS、第7戦放送予定だったテレビ東京も、同じ心境だったかもしれません。
プロ野球に限らずサッカーのJリーグ、バスケットボールのBリーグなど、国内スポーツは、「自分の好きな競技を選んで、お金を払って楽しむ」という嗜好性の高いコンテンツになりました。スタジアムや体育館へ行ったり、CSや配信サービスで見たり。いずれにしても「地元チームを家族や友人と一緒に応援する」という地域密着の意識が強くなり、「できるだけ多くの人が楽しめるコンテンツをそろえた」地上波ゴールデンタイムで放送するものではなくなっているのです。
ただし、前述したように、各競技の日本代表戦は例外。欧米の人々と比べても、「自国選手が外国人と戦う姿を見たい」「日本代表選手ならひいきのチームに所属していなくても応援する」という人が多く、テレビ局にとっては年齢性別を問わないビッグコンテンツとなっています。
さらに2020年の東京オリンピックは、より多くの競技にふれて魅力を知る絶好の機会。日本人が強い競技を中心に、今後はますますさまざまな日本代表戦を地上波ゴールデンタイムで見られるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。