国内

皇居の清水門を「開かず」にした日露戦争の悲劇

手前の高麗門を抜けると、奥の渡櫓が待ち受ける「枡形」の構造を持つ堅牢な清水門(撮影/竹内正浩)

 江戸時代から現在に至るまで400年以上にわたって日本の歴史の中心だった奇跡の場所・皇居。即位の礼で今一度注目が集まる皇居の「謎」に迫る。

 皇居・北の丸の東側に位置する清水門。春は桜、夏は蓮の花が咲き誇り、秋は紅葉、冬は雪景色が美しい場所だが、外国人観光客も多く訪れる大手門などと比べ、人通りは意外と少ない。

 その歴史は古く、もともとは寛永元年(1624)、安芸広島藩主の浅野家が建てた門で、明暦の大火(1657)で焼け落ちたと伝えられる。現在の門は、万治元年(1658)に再建されたもので、昭和36年(1961)6月には、国の重要文化財に指定された。歴史探訪家で『最後の秘境 皇居の歩き方』著者の竹内正浩さんが解説する。

「現在は清水門を通って北の丸公園に入ることができますが、清水門は日露戦争後、長らく“開かずの門”だったという伝説が残されています。その理由は、旧日本軍を襲った悲劇にあるのです」

 緑豊かな北の丸公園の現在の風景からは想像がつかないが、北の丸は明治から終戦まで、全域が軍の牙城であり、軍用地であった。

 日露戦争勃発は、明治37年(1904)。明治天皇から軍旗を拝受した最初の連隊で、最古参・最精鋭を誇った「近衛歩兵第一連隊」などから編成された部隊は、清水門を通って出征し、広島・宇品港で常陸丸に乗船した。しかし、玄界灘でロシア軍艦の攻撃を受けて轟沈。635名が戦死し、生存者はわずか96名だった。

「この悲劇以降、彼らを送り出した清水門の扉は固く閉ざされたともいわれています。近衛歩兵第一連隊の兵士たちはその悔しさを忘れず、昭和の時代になっても、演習の帰路などに声を揃えて『常陸丸殉難』の軍歌を歌ったそうです」(竹内さん)

※女性セブン2019年11月7・14日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン