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45年連れ添った妻が残した『七日間』という詩 夫婦の交換日記

夫・宮本英司さんが振り返る、45年間連れ添った妻・容子さんとの歩み

 最愛の妻の旅立ちから1年8か月。妻が残した『七日間』という詩を、夫は事あるごとに読み返している。そして、今なお変わらぬ思いを詩に託し、天国の妻に贈る──。

「妻にほめられることが、私のモチベーションでした」。思い出を慈しむように、宮本英司さん(72才)は語る。神奈川県川崎市、高台にあるマンションの一室。妻と愛犬とで暮らしていた頃を思うと、部屋がなんだか広く感じられる。食品メーカーを退社した後、ドールハウス作りや陶芸などの趣味で充実した日々を送り、その都度、妻からの感想を聞くのを楽しみにしていた。2人の息子家族は毎月訪ねて来てくれるが、妻不在はやはり寂しい。英司さんは、妻・容子さん(2018年1月、小腸がんで逝去。享年70)のことを、気づけば考えている。

「葬儀も済んで、気持ちが落ち着いてきた頃、ふと思いました。このままみんなの記憶から容子のことが薄れていくのかなぁ…と。そう考えると居ても立ってもいられなくなり、容子が存在していたことを示したくなりました。私の中では、まだ何も終わっていないんです」

 2年半に及ぶ闘病中、夫婦は病室で交換日記を始めていた。出会いから結婚、出産、子育て、引っ越し、転勤、新居での生活…五十余年の日々を思いのままに綴った。

「容子の言葉を書き記したノートの中に、詩があったことを思い出しました。容子が習っていた洋裁の先生が新聞投稿していたことも思い出し、彼女が最後に残したものを形にできないかなと思い、私も投稿してみたんです」

 2018年3月9日付の朝日新聞に載った『七日間』は大きな反響を呼び、共感の輪が広がった。その後、楽曲化され、歌手・クミコが歌い、CD化もされた。

「私たち夫婦の平凡な歩みが、多くのかたの共感を呼ぶなんて、正直、びっくりしました。人は、亡くなっておしまい…本当にそうでしょうか。肉体はありませんが、日常生活の中で容子を感じる瞬間はたくさんあります。もう死んでしまったんだ、という実感はありません。“いつまでもくよくよしたらダメだよ”と周りの人は励ましてくれますが、私の中ではなかなか割り切れません。今でもしょっちゅう夢に出てきます。ふたりでかわいがっていた愛犬・小春を連れ、ドライブしてたりします。そして、朝目覚めると、夢だと気づき、泣いてしまうこともあります」

 妻・容子さんとの歩みを振り返りながら、英司さんの尽きることのない思いを聞いた──。

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