さらに目を惹くのが尾花のシェフとしての手さばき。そんじょそこらの役者ではできない凄みがある。何が凄いかといえば、「真似ごと」を超えている点でしょう。「今回はシェフ役なので、雰囲気を真似てみました」といった水準を大きく超えている。

 手つき、目の動き、姿勢、指の滑らかな操作。考えてみると、これは「日常的に練り上げられた動作」に近い。

 つまり毎日のように切る、炒める、混ぜる、といった調理を繰り返していないと、調理人の「型」は体に入らないし、自然には見えないはず。職業人は職業それぞれの「型」を身につけているわけですが、この「調理人の型」に迫ろうというキムタクには、やはり脱帽せざるをえない。この見事な包丁さばきは、いったいどこで……?

 そうでしょう。『SMAP×SMAP』のビストロSMAPコーナーで、約20年間も料理を作ってきたのです。スマスマでのあの貴重な経験を、今キムタクはいわば独り占めし、おおいに活用しているのです。いや、独り占めという言い方が適当でなければ、「過去の資産を有効活用している」と言えばいいのか、もうアッパレと言うしかありません。

 最後に敢えて、一つ残念な点を挙げるとすれば、ライバルの描き方が図式的に過ぎる点です。レストラン「gaku」の丹後シェフ・尾上菊之助とオーナー・手塚とおるの悪役ぶりが、あまりに単純な造形になっています。せっかくキムタクチームは細かな演出・演技、食材からレシピまで徹底的に作り込んでいるのに。ライバルを幼稚化し過ぎてしまったら、元も子もない。

 もちろんそのあたりは役者には罪がなくて、演出上の問題でしょう。今後、単純な対決話やサクセスストーリーに陥ることなく、大人が見応えを感じる成熟ドラマに仕上げていくことができるのかどうか。期待し注目したいと思います。

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
50歳で「アンパンマン」を描き始めたやなせたかし氏(時事通信フォト)
《巨大なアンパンマン経済圏》累計市場規模は約6.6兆円…! スパイダーマンやバットマンより稼ぎ出す背景に「ミュージアム」の存在
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン