まず、かなり長い文章を読ませて、どんなことが書いてあるか、日本語で1200字以内に要約させる。BBT大学は通信制オンライン大学なので、辞書で調べたり友人らと携帯電話で相談したりするカンニングはOKだ。次に、学生が出してきた答えに対し、より詳細なことや具体例などを質問して2時間以内に800字で書かせる。これはそれぞれ質問が異なるし、時間の制約もあるから、カンニングはできない。
この試験方式は労働集約型なので採点する教官たちは大変だが、我々が学生に求めている能力──みんなの意見を聞いて結論をまとめていく能力と突発的な事態が起きた時に人に頼らず自分なりの答えを導き出せる能力―があるかどうかを確実に測ることができる。
また、私がMIT(マサチューセッツ工科大学)大学院の博士課程を受験した際は三つの言語ができないといけなかったので、第1言語を英語、第2言語を日本語、第3言語をドイツ語にした。筆記試験後のドイツ語の試験は、ネイティブ2人と会話してコミュニケーション能力を測るものだった。
ことほどさように、大学入試の英語(語学)試験は、学部や学科の目的によって内容や方法が変わって当然なのである。たとえば、理系では外国の文献を調べて自分の論文をまとめるための読解力や筆記能力が求められるだろうし、文系ではヒアリング能力や会話能力を重視すべき学部や学科があるはずだ。英語は語学である以上、コミュニケーションのツールである。そのコミュニケーションが主として論文や学会の発表なのか、会話なのか、メールなのか、それとも会社のプレゼンテーションなのかなどによって、求められる能力は大きく異なるのだ。
◆安倍政権下で一気に加速
ただし、TOEFLなど国際的な試験の結果では、日本人の英語力は常に最下位グループだ。たとえば、2017年のTOEFL スコアで日本は世界170か国中146位、アジアに限っても29か国中26位という惨憺たる状況である。その根本原因を分析して対策を取ることもなく、大学入試の英語試験を外部の業者に委託するというのは無責任極まりない。