そもそも民間試験は高校までの学習指導要領と無関係なのだから、文科省は従来の学習指導要領至上主義を放棄したに等しい。文科省は民間試験と高校学習指導要領の整合性を確認したとしているが、もし文科省が学習指導要領や教育プログラムに自信があるなら、その延長線上で進捗度を測る共通試験を自分たちで作るべきである。
それができないのであれば、もう文科省は“無条件降伏”し、英語教育から手を引くべきではないか。その代わり、各大学が独自の視点からテストを考案するなり、業者と共同開発するなりしたほうが、受験生や保護者に対するメッセージが明確になるだろう。
もともと英語民間試験の導入の議論は、第二次安倍政権発足直後の2013年4月、自民党や経済同友会が大学の英語入試に、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を総合的に測定する外部資格試験TOEFLの活用を提言したことで一気に加速した。そして早くもその2か月後の同年6月には、安倍内閣が大学入試に「TOEFL等外部検定試験の一層の活用を目指す」とした「第2期教育振興基本計画」を閣議決定し、これが既定路線となったのである。
それ以降、様々な批判や反対が続出する中で、TOEFL以外の民間試験も活用できるように変更し、それら複数の業者の意見を聞くなどして後付けで今のような制度を整えた。つまり、受験生のためではなく、文科省の省益と業者の利権のためのものであり、汚職や天下りの温床になりかねないのだ。あまりにも杜撰で不可解な英語民間試験は、延期ではなく即刻「白紙撤回」すべきである。
※週刊ポスト2019年11月22日号