2013年に当時世界最高齢でのエベレスト登頂を達成し、87歳の今も現役プロスキーヤーの三浦雄一郎氏。少年時代に出会った吉川英治の『宮本武蔵』で描かれる武蔵の生き様が、自身の「原点」になったという。三浦氏が語る。
「中学受験に失敗して、浪人生活を送っているときに本を読み始め、そこで影響を受けたのが吉川英治さんの『宮本武蔵』です。同作では武蔵の生い立ちから青春時代、厳しい修行、命を懸けた果し合い、晩年の『五輪書』に取り組んだ姿が克明に描かれていました。
命を懸けて剣の道を究めようという姿は、『スキーで世界の頂点に挑戦しよう』という気持ちのバックボーンになっています。その精神が、エベレストからの滑降や登頂へと僕を駆り立てるのかもしれません」
メジャーリーグで活躍し、数々の大記録を残した元プロ野球選手の松井秀喜氏も、宮本武蔵に影響された一人。武蔵が剣術の極意を著した『五輪書』は、野球のバッティングを究めようと奮闘し続けた松井氏の愛読書としても知られている。
※週刊ポスト2019年11月22日号