家族に罹患者がいるとリスクが上昇する「がん」
「『家族歴のあるがん』は遺伝だけでなく、家族が同じ地域に住み、同じような生活習慣や環境を共有していることが原因の可能性もあります。今回の研究結果も、その影響が大きいのではないか。
過去の様々な研究から、胃がんはピロリ菌感染、肝がんはウイルス感染やアルコール、子宮頸がんはウイルス感染など生活習慣・環境要因によるところが大きく、遺伝要因の影響は少ないとされています」
◆「リンチ症候群」とは何か
今回の研究では大腸がん・乳がん・前立腺がんの3つに統計的に有意な結果が出なかった。吉田医師はこの結果をどう考えるか。
「双子約4万5000組のがんの発生率を調べた北欧の大規模調査では、遺伝要因が明らかに発病率に影響を与えているのが、この3つのがんだと結論づけています。
がんの中には、特定の1つの遺伝子変異が原因となって引き起こされる『遺伝性腫瘍』と呼ばれるものがあります。その代表が、主に大腸がんを引き起こす『リンチ症候群』と、主に乳がんや卵巣がん、男性では前立腺がんなどを引き起こす『遺伝性乳がん・卵巣がん症候群』という疾患です。
リンチ症候群は、全大腸がんの2~3%を占め、『MLH1』や『MSH2』など4種類の遺伝子の変異があることが判明しています。『遺伝性乳がん・卵巣がん症候群』は全乳がんの5~10%を占め、『BRCA1』『BRCA2』の2つの遺伝子などの変異が分かっています。こうした遺伝性腫瘍は男女関係なく50%の確率で親から子に遺伝します」
