保釈され、警視庁東京湾岸署前で頭を下げるピエール瀧(時事通信フォト)

保釈され、警視庁東京湾岸署前で頭を下げるピエール瀧(時事通信フォト)

 店の経営は一気に傾き、毎月3桁の赤字が出るようになった。薬物系の客たちは”都合の良い店だ”と押し寄せては、無銭飲食を働くまでになっていたからだ。”警察に全部話そう”という恵さんの声は、経営を必死に立て直そうとする夫の耳には届かなかったようで、夫妻はますます窮地に追い込まれる。そして悲劇が起こった。

「夫は自ら命を絶ちました。店の家賃、食材の仕入れ代が捻出できなくなり預金が底をつくと、入り浸っていた客のつながりで、闇金に手を出していました。一度だけ店を畳もうと考えたようですが”大家に全てバラす、そうすれば入居時に支払った数百万の保証金も戻らない”などと客に脅されていたんです」

 恵さんは気が付いていた。追い込まれた夫は晩年、自暴自棄になりコカインや合成麻薬を使用するようになっていたのだ。金策に走りながら、店を必死で立て直そうと、誰からか吹き込まれた薬物を用い寝ずに働いたが、最後は絶望に堕ちたのだった。

「夫も私も”少しくらいなら”と甘かったのです。夜の世界にはそういう人たちがつきものとさえ思っていました。薬物など私たちには関係がないはずでしたが、見て見ぬ振りの結果、こんな仕打ちを受けなければならないなんて想像もできませんでした」

 薬物事件に被害者はいない、というのはやはり間違っていると改めて思う。

 言うまでもないが、薬物売買によって得られた利益は、反社会勢力による別の犯罪行為の資金源にもなっていることも、改めて確認しておきたい。例えば、違法薬物取引で得られた金が、特殊詐欺グループが活動する拠点確保、電話やカモリストなどの道具集め、人員確保代に使われているという話もある。薬物を買う人がいなければ、間接的に、特殊詐欺の被害に遭う人が減る、と言うこともできよう。

 薬物さえなければ犯されるはずのなかった犯罪が、起きるはずのなかった不幸が世の中に溢れている。薬物と直接接しなかった人でさえ、いつの間にか闇に取り込まれてしまう現実。これが薬物の怖さなのだ。

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