国内

薬物は「被害者なき犯罪」ではない 周囲も闇に陥れる現実

沢尻エリカ容疑者を乗せ送検のため警視庁東京湾岸署を出る車(時事通信フォト)

沢尻エリカ容疑者を乗せ送検のため警視庁東京湾岸署を出る車(時事通信フォト)

 近年、薬物事件が起きて逮捕者が出ると「被害者なき犯罪」と、訳知り顔で語る人たちがいる。本人が危険にさらされるだけで、被害を受ける人はいないから、社会的制裁を伴う逮捕が行われない限り、誰にも迷惑をかけていないというのだ。だが、果たして本当に被害者はいないのだろうか? 依存性が高く、判断力を失わせる違法薬物が身の回りに出現したがゆえに、人生が変えられてしまったと訴える”被害者”たちの声を、ライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 合成麻薬(MDMA)を所持していたとして逮捕された女優・沢尻エリカの報道が加熱している。もっとも、以前から”噂”があったためか、使用の現場とされる渋谷区内のクラブには、テレビや新聞、週刊誌の記者がこっそり潜入し取材をしているという話も聞こえていた。沢尻といえば、その生意気な言動で世間からあらゆる好奇の目を集めたが、その後の薬物疑惑を払拭しつつ、まさに大女優への階段を登りかけていた最中の事件。マスコミの気持ちもある程度は理解できる。

 しかし、これら報道が「薬物は絶対にダメだ」という社会への呼びかけに全くなっていない部分には、大きな違和感を抱かざるを得ない。むしろ「合成麻薬とは沢尻にみたいな遊び人とは切っても切れないもの」などといった諦観、そして見下しのイメージ作りが先行し続け、とあるワイドショーではコメンテーターが「薬物使用は被害者なき犯罪」とまで言ってのけた。

 それは違う。薬物犯罪には必ず被害者がいるし、殺人や強盗に劣るとも勝らない負の側面がある。むしろ、この認識こそが薬物犯罪を蔓延らせる原因であり、使うものと使わざるものを「分断」している原因ではないか──

「あの男は元々常習者でしたが、再婚後にママも一緒に覚せい剤をやるようになりました。私は当時小学校低学年だから記憶もはっきりしている、というか忘れたくとも忘れられないんです」

 辛い記憶を紐解いてくれたのは、筆者が以前「援助交際」について取材した時に応じてくれた北海道在住の増田かな子さん(仮名・当時10代後半)だった。かな子さんは、両親が覚せい剤で逮捕されると、母方の親族のもとに身を寄せた。しかし、親族からは「薬物中毒者の娘」「汚い」と罵られ続け、中学卒業とともに逃げ出すように上京。品川区内のキャバクラ店に年齢を誤魔化し入店、当時は店の寮であるタコ部屋同然の部屋で暮らしていた。

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン