2018年12月にはタレントの稲村亜美さん(左から2人目)が一日警察署長を務め、悪質な客引きを撲滅を訴えた(時事通信フォト)

2018年12月にはタレントの稲村亜美さん(左から2人目)が一日警察署長を務め、悪質な客引きを撲滅を訴えた(時事通信フォト)

 違法キャッチとぼったくり店は、客に飲食サービスを提供するという意識がそもそもなく、客からいくら引き出してやろうかという一点のみが目的であるがゆえ、より強引に客を連れ込み、より高額な請求を要求する。そのため、違法キャッチグループ同士での客の取り合いは、度々事件化するほど熾烈になってゆき、東京・上野では、対立する違法キャッチグループ同士の争いで硫酸が撒かれたことすらあったほどだ。

「違う店の名前を語って自分の店に連れてくなんて、基本のキでした。系列店とか姉妹店とか嘘の説明するのも当たり前、週末などはどの店もいっぱいだから、単価の高い店しか空いてない、でも俺の顔で安くしますとか言ってみたり。実際、マジで行列のできる店の前はキャッチのライバルで溢れ返ってました。飲みにきた客が溢れてるわけですから、僕らにとっちゃ釣り堀みたいなもんで」

 今一度確認しておきたいが、今や、キャッチが案内する店にまともな店はただの一店もない、といっても過言ではないし、そう説明すべきだと思う。

 取材した店の中には、違法キャッチグループと契約しないため嫌がらせをされるというまともな飲食店も存在した。いわゆる暴力団のみかじめ料と同様のシステムで金を払う代わりに、キャッチと契約を結ばないと街から追い出すと脅す、という寸法だ。その頃は、キャッチが案内する店の100%がぼったくり店というわけではなかった。中には”まともな店”もあり、彼らはキャッチにいくらかの”バック”を、それこそみかじめ料がわりに支払っていたのだ。しかし当然、まともな店よりぼったくり店に案内する方がキャッチは儲かる。そのため、この数年の間に、違法キャッチはまともな店を紹介しなくなり、違法なぼったくり店へしか案内しなくなっていた。

 現在も、店主がまともな接客をする店であっても、違法なキャッチを営業目的で利用する店が少なからずある。違法であるし、暴力団まがいのグループからビジネスパートナーにされていると分かっていても、実際に客を連れてきてくれるから背に腹は代えられないというのだ。清濁併せのむといえば聞こえは悪くないかもしれないが、こうした店はやはり”まともではない”と判断するしかないし、近づかない方が懸命だ。どんなに安かろうと、うまい料理で客をもてなそうとも、違法な営業に頼っているという現実がある以上、店全体が遵法意識に欠け、「このくらい大丈夫だろう」とあらゆることに対してルーズになっている可能性が高い。飲食をサービスするなら守らねばならぬ最低限のことも、見過ごしにしても平気だと思われても仕方がない。

「俺の場合だと、客が使った金の20パー(%)とかもらってた時もありました。客が2万円使えば手元に4千円です。だから、効率的に儲けるためには高級店とか、ぼった(くり)店に案内した方がいい。僕が辞める時には、案内する店は全部ぼった店でした」(前出の辻さん)

 月収が50万円を超えた頃、辻さんは先輩同様、後輩を違法キャッチグループに引き入れた。後輩達は辻さんと同じように、高給に感激していたという。

「後輩の取り分は、最初は10パー。本当は20パー以上のバックがあるんですけど、そこは僕らで山分けになります」

 あまりの高給になかなか違法キャッチから足を洗えなかった辻さんだが、辞めたきっかけは呆気ないものだった。

「サークルの飲み会を、ぼったくり店でやれば儲かるなって思ったんです。後輩と結託してやり始めたんですが、2回目でバレました」

 サークルは追い出され、被害に逢った仲間や後輩達が大学に報告する騒ぎになったという。

「すでに留年確実でしたし、何もかもどうでもよくなり、大学ごと辞めてしまいました。なんというか…あの時は、人を見つけたら金に見えていたくらい、儲かることに執着していました。今考えると詐欺以外の何物でもない。実際、キャッチには特殊詐欺をやっていたというメンバーもいました。こんな形ですが、僕は辞められてよかった。被害者には申し訳ないという気持ちしかありません」

 金に目がくらみ、違法な世界に落ちていく若いキャッチ、ぼったくり店のスタッフ達。儲けられれば詐欺でも泥棒でも構わないという感覚は、まさに今隆盛を極める「特殊詐欺」界隈の連中と同様なのだ。

 最近の大学生は、親世代の収入が上昇しないため、アルバイトをして学費や生活費を補うのが普通になっているという。とはいえ、いくら高給が得られるからと違法な仕事にハマり、拝金主義に染まってすべてを失っては元も子もない。働くうえで、最低限の守らねばならないことをどのように子供たちに教育するのが適切なのか、改めて考えるときが来ているのかもしれない。

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