芸能

ビートたけし「不祥事芸人をしゃぶり尽くすテレビ」を批判

最新刊『芸人と影』が話題のビートたけし氏

最新刊『芸人と影』が話題のビートたけし

 今年は闇営業問題などお笑い芸人の不祥事がニュースやワイドショーを騒がせた。芸能界の闇をテーマにした新刊『芸人と影』を上梓したビートたけしが、テレビ業界が不祥事タレントをしゃぶり尽くす構造についてモノ申す。

 * * *

 いつから、こんな窮屈な世の中になっちまったんだろう。このごろのニュースを見ていて、つくづくそう思う。ちょっと前は、タレントが週刊誌に不倫スキャンダルをバラされて、テレビから次々と追い出された。そして2019年、不倫スキャンダルに飽きたメディアが飛びついたのが、芸能人の「闇営業」の問題だった。

 雨上がり決死隊の宮迫博之やロンドンブーツ1号2号の田村亮をはじめとする若手のお笑い芸人たちが、振り込め詐欺をやらかすような半グレ集団の忘年会に呼ばれてさ。それが事務所を通さない仕事だったから「闇営業問題」と呼ばれたわけだ。

 それを斡旋したカラテカの入江慎也は吉本興業を追い出されて、他の芸人たちも謹慎処分になった。数万円レベルのギャラしかもらっていなかった芸人はしばらくして復帰したけど、100万円をもらっていたとされる宮迫、50万円の亮はいまだにテレビから姿を消した。

 もちろん、不倫も闇営業も世間的には褒められたことじゃない。タレントや芸人たちがそれなりのけじめを求められるのは仕方ないだろう。だけど、こういう騒動に関して気になるのは、どちらかというと「世間の過剰反応」のほうだ。

「こんな不道徳なヤツラ、テレビに映しちゃけしからん」というところから始まって、最終的には「コイツラの出演番組のスポンサーが売っている商品は買うな」というところまで一気にエスカレートしてしまう。インターネット、とくにSNSとかいうものを媒介にして、その動きは一気に広がっていく。

 するとテレビ局はとたんに縮み上がる。コンプライアンスやスポンサーへの体面を気にして、問題を起こした芸人の登場シーンをムリヤリ編集でカットしたり、出演を自粛させたりということになる。要は世間から袋だたきに遭う前に、「我々はここまでやりました」ってアリバイを作ろうってだけの話でさ。そうやって芸人たちの居場所がドンドンなくなっていく。

 体よく芸人たちを締め出しても、テレビはしくじったヤツラを別の形でとことんエサにする。朝から晩までワイドショーや情報番組で取り上げて、訳知り顔のコメンテーターに「けしからん」「反省しろ」と、さも真っ当そうなコメントを言わせるわけだ。人の不幸は蜜の味ということで、格好のネタになる。

 2019年はいろんな事件があったけど、結局のところ毎度この繰り返し。失敗したタレントはみんなテレビのネタにされて、視聴率が取れなくなるまでしゃぶり尽くされる。

 宮迫あたりは、これまでも『アメトーーク!』(テレビ朝日系)でソコソコ顔が売れてたはずだけど、オイラたち世代のジジイ・ババアがみんな知ってるかといえば、そこまでじゃなかったはずだ。でも、今回の件でニュースやワイドショーに取り上げられて、一気に「国民的」になっちまった。皮肉だよな。

 その結果、「世間を笑わせる存在」だったはずの芸人たちは、「世間に笑われる存在」にまで堕とされてしまう。これは芸人にとって致命的だ。だってそうだろう。涙ながらに「すいませんでした」と世間に頭を下げた人間が、その後に舞台に立ってヘラヘラと笑いを取れるだろうか。世間が、テレビが、ネットが、よってたかって芸人やタレントの「笑い」を殺しにかかっている構図だ。

 宮迫の場合、「カネを受け取ってない」とウソをついたことが騒動を大きくさせた。こんな風に、タレントたちの事後処理が甘いことも少なくないけれど、それにしたってこの風潮は異常だよ。

※ビートたけし/著『芸人と影』(小学館新書)より

 

 

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト