大麻に関して「法律を変えろ」と訴えながら、コッソリ大麻を使用(使用するからには所持しなければならないので法律違反)してしまえば、その説得力はゼロになる。某元女優は全く同じ道筋を辿り逮捕され、社会的な信用を失墜させた。国母が大麻取締法違反で逮捕された同日「大麻が違法なのはおかしい」とする記者会見を開いたが、彼女の主張が仮に正しかったとしても、法律を破りながらの訴えでは、まともに聞き入れようとした人はごくごく僅かだっただろう。
そして何よりも、大麻という違法薬物を入手するためには、暴力団などの法律を守るつもりがない人々と接点を持たなければならないという点も忘れられがちだ。
「クサ(大麻)は気持ちよくなるだけやし、罪悪感はなかったですね。クサを引きよった(購入していた)のは地元の暴力団で、そのうちタマ(合成麻薬・MDMA)もあるけん買わんや、ってすすめられて。断ったら大麻のことバラされるかも知れんでしょ、仕方なく買うたけど捨てました。シャブ(覚せい剤)勧められたのはそれからすぐですよ。クサ買いに行ったらその場で“お試し”って言われて、吸わされて。シャブだけは絶対にせん(しない)、と思ってましたけど、一回やったらダメでした」
こう回顧するのは、他でもない、九州に在住する筆者の後輩である。もともとお調子者ではあり、十代の頃から繁華街のクラブに出入りしては酒を飲み、喫煙していた。しかし、父とは死別し女手一つで育てられた彼は、母親だけは絶対に困らせまいと仕事にも大いに打ち込み、家賃や生活費などは全て負担した。しかし二十歳の成人式を迎える前に、覚せい剤の所持と使用の疑いで逮捕されたのだった。
「大麻は影響が少ないていうでしょ、俺もそう感じてました。シャブなんかより全然大丈夫って思ってました。でも今考えるとですね、クサに手を出した時点でこうなることは決まっとったんです。クサも初めて吸ってみて気持ちよくなってやめられなくなった。シャブもそうです、一回やったらもう手放せんように…」
幼少期に親や年長者に言われた「悪い人と一緒にいてはいけない」ということ。それは、子供である私が「悪くなっては困る」ではなく「悪い人に取り込まれてしまう」という心配、そして純然たる親心なのだ。後輩は結局覚せい剤の使用などで三度逮捕されたが、三十路で子供ができて心を入れ替えた。それでも「いつかまたやってしまうかも知れないという葛藤」と日々戦い続けている。