オイラの映画『3―4×10月』じゃ、クライマックスで主人公がヤクザの事務所にガソリン積んだタンクローリーで突っ込んでいくけどさ。そういう「自分より強い相手」に向かっていく気合いはないんだからね。
命を捨てる覚悟があれば、悪人に立ち向かってもいいし、北朝鮮に乗り込んで拉致被害者を命懸けで救出しようとしたっていい。だけど、そんなことは思いもしないわけだよ。カッコ悪いにもほどがあるよ。
こんな胸糞悪い事件は、大阪の大教大附属池田小を襲った宅間守以来だよな。宅間は「死刑にしてほしい」って自ら望んでて、オイラは事件当時、「絶対アイツの望み通りにしちゃいけない」ってジャンジャン色んなところで話したんだよな。だけど、結局すぐに死刑にしちまった。
「死んでも構わない」ってヤツにとって、死刑はまるで懲罰にならないのにさ。 この川崎の事件の犯人もそうだけど、自分の人生をちゃんと生きようと食らいつかないヤツは、人の「死」についても軽く考えちまう。こういう甘えた大人を、これ以上増やしちゃダメだよ。
※ビートたけし/著『芸人と影』(小学館新書)より