スポーツ

フィギュア「回転不足や新ルールの判断基準」現役審判員解説

仏杯フィギュアスケートのショートプログラムでジャンプをする宇野昌磨(写真/時事通信社)

 フィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナルが5日に開幕した。シーズン後半に差し掛かり、盛り上がりを見せているが、テレビ放送を見ていると、「この選手はノーミスだったのにも関わらず、思ったより点数が低いな」と感じることはないだろうか。それはフィギュアスケートの細かなルールによるものだが、テレビを見ているだけではちょっとわかりにくい。そこで、ジャンプの回転不足の判定などの疑問点について、千葉大学国際教養学部教授でフィギュアスケート国際審判員(国際テクニカルコントローラー、ISUジャッジ)の吉岡伸彦さんに聞いた。

◆ジャンプの「回転」はどう判断しているのか

 フィギュアスケートで素人目にわかりにくいのが、ジャンプの回転だろう。「今のジャンプは回転が足りてないですね」というテレビ解説を聞いても、審判がどこを見て判断しているか、今一つわからないところがある。ジャンプの判定について、吉岡さんは次のように語る。

「ジャンプの入り方はアクセルジャンプのようにフォア(前向き)で入るもの、それ以外のバック(後ろ向き)で入るものがあり、入り方もいろんなパターンがあります。その時に我々審判が見るのは着氷した瞬間に、ジャンプの空中での進行方向を基準にして降りたほうの足がどこまで回っているかです」(吉岡さん・以下同)

 ジャンプは360度回って1回転とみなす。それは離氷(テイクオフ)した時点から着氷まで判定の対象となり、3/4回転以上回っていればOK。それに足りない場合は回転不足とみなされる。よくテレビで「1/4足りていませんね」と解説されるのは、1/4回転以上、1/2回転未満の回転不足を指し、アンダーローテーションと言われる。

「ジャンプの回転は、空中で2回、3回、4回回ったかを確認し、ダブル、トリプル、クワド(4回転)を判断します。その回転は降りた瞬間に止まっている場合もあれば、回り続けている場合もあり、そこから滑り出していきます」

 ここで見るのが氷に着いたほうの足の向きだ。スケート靴の刃の部分(ブレード)に注目すると、わかりやすいかもしれない。「氷を上から見た時に、滑り出す方向の直線に対し、着いたほうの足の向きが90度以上180度未満の位置にあると、1/4回転以上、1/2回転未満の回転不足とみなされます」

 ちなみに180度以上の位置に足の向きがあれば、1/2回転以上の不足とみなされ、こちらはダウングレードとして、さらに点数は低くなる。では、ジャンプの踏みきりはどうか。選手によっては氷から足が離れる前からすでに足と体がまわり始めて見えるようなことがある。これは中途半端なジャンプとして回転不足はとられないのだろうか。

「踏み切りも回転不足の判断材料としてみます。ただし、通常、完全に空中に体が出てから回転を始めることはできないので、どのジャンプも踏み切りの時点で回転しながら上がっていくことは避けられません。そのため、1/4回転以上、1/2回転未満の回転不足はとってはいけないことになっています。また、基本的にテイクオフ動作から上がっていくときに、連続した動きになっていれば1/2回転以上の回転不足もとりません。そこをとってしまうとなんでもかんでも回転不足になってしまうからです。ただし、コンビネーションジャンプでセカンドのトウループを跳びに行くとき、前を向いて一瞬動きが止まっているような場合はダウングレードの判定をしますが、それ以外はほとんどとることはありません」

 フィギュアスケートの審判団は、ジャンプの認定、スピン、ステップといった要素のレベルを判定する技術審判員3人とその出来栄えに評価をつける最大9人のジャッジで構成される。回転が足りているかそうでないかを確認するのは、このうちの技術審判員の3人だ。

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン