聖ニコラウスが英語読みされてサンタクロースへ。アメリカで起きた変化はこれに留まらず、プレゼントを残していく日も12月6日から12月25日へと変えられた。後者がイエス・キリストの誕生日(降誕日)で、両者の間隔が狭いことから、ひとまとめにされたのだろう。
けれども、イエス・キリストの誕生日を12月25日とすることは4世紀の公会議での決定事項でありながら、それには何の根拠もない。福音書のどこを読んでも月日はおろか、季節を特定できる記述さえ見当たらないからだ。
12月25日は古代ローマの暦で冬至の日。2~3世紀のローマ帝国において、キリスト教と並んで流行したイラン起源のミトラス教で最大の祭日「不滅の太陽神の誕生日」でもあったことから、古来の伝統とミトラス教からの改宗者を考慮して、その日を降誕日に定めたものと考えられる。
なお12月25日を祝うのはカトリックとプロテスタントからなる西方教会だけで、ギリシア正教会、ロシア正教会、エジプトのコプト教などからなる東方教会では、東方からはるばるやって来た3人の賢者が嬰児イエスを目にした1月6日に重きを置く傾向があり、西方教会でも1月6日をもってクリスマス・シーズンの終わりとする。日本のキリスト教施設でもクリスマス・ツリーの片づけはおおむね1月6日である。
【プロフィール】しまざき・すすむ/1963年、東京生まれ。歴史作家。立教大学文学部史学科卒。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て現在は作家として活動している。著書に『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『いっきにわかる! 世界史のミカタ』(辰巳出版)、『いっきに読める史記』(PHPエディターズ・グループ)など著書多数。最新刊に『ここが一番おもしろい! 三国志 謎の収集』(青春出版社)がある。