自分がマイクに向かって「こんにちは」と話すなんて、想像したことすらなかったから、この機会を作ってくれたハセジュンやスタッフには感謝しかないんだけどね。
でも、7週出たところで、大手広告代理店Dのラジオプロデューサー・T氏から「お会いして30分ほどお話がしたい。新橋までご足労を願いたい」とメールをいただいたの。
何ごとかと馳せ参じたら、「今後は相談役ということで」とのこと。「来週はもういいということですか?」と聞くと「そうですね」と。
ホント、人の価値基準っていろいろね。私が「なら、メールでもよかったのに」と言うと、T氏は「きちんとお会いしてお話ししたかったので」と誠実そのものの様子。「わざわざ来ていただいてすみません」ともおっしゃったけど、小雨が降る中、すっかり日が暮れた新橋を歩く気持ちといったら…。回を重ねるたびに「いけるか?」と調子に乗った自分が心底恥ずかしいわ。
この2つが“ホロ苦系”だとしたら、これは“激甘”?先週、とんでもないことが起きたの。『週刊新潮』の連載エッセイ『この連載はミスリードです』の執筆者で、ネット編集などで活躍されている中川淳一郎さんが私のことを採り上げてくれたのよ。
『NEWSポストセブン』の編集をしている中川さんとは、編集部で立ち話をする仲。
先日、「国会議事堂の見学に来ない?」と言ったら、「行く、行く。妻を同行していいですか」だって(私はライターをしつつ、アルバイトで、小学6年生や代議士の選挙区からやってくる人たちを、国会議事堂の中へ案内している)。
国会議事堂のハイライトの1つは『御休所(ごきゅうしょ)』。国会の開会の日にいらっしゃる天皇陛下が、本会議場に入る前にお休みになる部屋で、壁、天井、床、シャンデリア、椅子、暖炉──国会議事堂の建設費の10分の1をかけたという説もあるくらいで、そこは日本の建築技術の粋を集めた見事さだ。
私が「蝶つがいに菊の御紋の彫金って、すごくない」と言うと、中川さんの奥様は「わあ~、わあ~、すごい」と目をキラキラさせて見ている。
けれど、中川さんの反応がイマイチ。聞けば、突発性のうつ症状が出てしまったとのこと。でも、そこで立派だったのが奥様。夫の異変にすぐ気づいたはずなのに、天に抜けるような顔で笑い、話して、「はい、ポーズ」などと、夫の記念写真を撮ったりしている。これ、なかなかできることじゃありませんぜ。
そんなふたりが並んで帰る後ろ姿を見送りながら、心底、いいな~と思った。令和を生きる目的が見えたようで背筋が伸びちゃった。
令和2年、多くのホロ苦く、そして甘い体験ができますように。
※女性セブン2020年1月2・9日号