芸能

『グランメゾン東京』に見る今期好調だったドラマの共通点

『グランメゾン東京』の撮影が行われたパリの三ツ星レストラン「ランブロワジー」(写真/ロイター/アフロ)

 ドラマの評価を考える上で時代性は不可欠なポイントだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 いよいよ今年も終わりに近づきました。今クールのドラマを振り返って、目を惹いたのが書き下ろし脚本によるオリジナルの2作品です。一本は遊川和彦脚本の『同期のサクラ』(日本テレビ系)、そしてもう一本が黒岩勉脚本の『グランメゾン東京』(TBS系)。

『同期のサクラ』はすでに幕を閉じましたが、最終回(12月18日)も視聴率をぐっと伸ばして最高の数字となり、平均視聴率10.89%と二桁を保持。一方、12月29日に最終回を迎える『グランメゾン東京』も、絶えず話題になり視聴率二桁をキープする好調ぶりです。

『同期のサクラ』は、『女王の教室』『家政婦のミタ』等で世間に衝撃を与えてきた遊川氏の脚本だけに、構成のユニークさが光っていました。毎回(前半)、脳挫傷で意識が戻らないサクラ(高畑充希)が病院のベッドに横たわるシーンから始まり、1話で1年分を描き、全体で10年間を振り返る、といった凝った仕掛けでした。

 途中で「サクラが脳挫傷になった理由」が、「走ってくるバイクから子どもをかばった事故」と判明。そんな突発的な事故を挿入し主人公を重病人にしてしまうご都合主義には、見ているこっちも拍子抜けしました。しかし遊川脚本ですからそれだけでは終わらない。昏睡状態から醒めたサクラは仲間に支えられて再生していく。リハビリを重ね社会復帰、とうとう花村建設へ再入社……たしかに想定外の筋立てが組み立てられていきました。

 そして最終回。結局サクラは花村建設という組織に「ノー」を突きつけて退職し、小さな建設会社で再び夢を追いかける、という着地。あれ? 「私には夢があります」が口癖だったサクラ。「故郷の島に橋をかける」というでっかい夢はいったいどこへ? 遊川脚本の割にはあまりに凡庸では。ブーイングや矛盾点を指摘する声が視聴者から上がったのも事実ですが、それ以上に鳴り響いたのは、こんな賛辞でした。

「仲間っていいなとあらためて実感したドラマ」
「社会人なら誰でも抱えている葛藤を、仲間たちと乗り越えるという結末にじーんときた」「陳腐と思いながらも、真剣に生きるってこういう感じだと感動した」

 ドラマの着地は「凡庸」だとわかっている。その上で、生きにくい時代に勇気をくれるドラマだった、仲間のありがたさに感動した、と評価したい。そしてエンディング曲「さくら(二〇一九)」の森山直太朗の声に素直に涙した、という人が多かったのでした。その着地の仕方が遊川脚本の狙いだったとすれば、「巧みな凡庸さ」に脱帽です。

 対して、『グランメゾン東京』(TBS系)はどうだったか。

関連記事

トピックス

ホームランを放ち、観客席の一角に笑みを見せた大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平“母の顔にボカシ”騒動 第一子誕生で新たな局面…「真美子さんの教育方針を尊重して“口出し”はしない」絶妙な嫁姑関係
女性セブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
《司忍組長の「山口組200年構想」》竹内新若頭による「急速な組織の若返り」と神戸山口組では「自宅差し押さえ」の“踏み絵”【終結宣言の余波】
NEWSポストセブン
1985年、初の日本一は思い出深いと石坂浩二さんは振り返る(写真/共同通信社)
《阪神ファン歴70数年》石坂浩二が語る“猛虎愛”生粋の東京人が虎党になったきっかけ「一番の魅力は“粋”を感じさせてくれるところなんです」
週刊ポスト
第1子を出産した真美子さんと大谷(/時事通信フォト)
《母と2人で異国の子育て》真美子さんを支える「幼少期から大好きだったディズニーソング」…セーラームーン並みにテンションがアガる好きな曲「大谷に“布教”したんじゃ?」
NEWSポストセブン
俳優・北村総一朗さん
《今年90歳の『踊る大捜査線』湾岸署署長》俳優・北村総一朗が語った22歳年下夫人への感謝「人生最大の不幸が戦争体験なら、人生最大の幸せは妻と出会ったこと」
NEWSポストセブン
コムズ被告主催のパーティーにはジャスティン・ビーバーも参加していた(Getty Images)
《米セレブの性パーティー“フリーク・オフ”に新展開》“シャスティン・ビーバー被害者説”を関係者が否定、〈まるで40代〉に激変も口を閉ざしていたワケ【ディディ事件】
NEWSポストセブン
漫才賞レース『THE SECOND』で躍動(c)フジテレビ
「お、お、おさむちゃんでーす!」漫才ブームから40年超で再爆発「ザ・ぼんち」の凄さ ノンスタ石田「名前を言っただけで笑いを取れる芸人なんて他にどれだけいます?」
週刊ポスト
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
「よだれを垂らして普通の状態ではなかった」レーサム創業者“薬物漬け性パーティー”が露呈した「緊迫の瞬間」〈田中剛容疑者、奥本美穂容疑者、小西木菜容疑者が逮捕〉
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で「虫が大量発生」という新たなトラブルが勃発(写真/読者提供)
《万博で「虫」大量発生…正体は》「キャー!」関西万博に響いた若い女性の悲鳴、専門家が解説する「一度羽化したユスリカの早期駆除は現実的でない」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《美女をあてがうスカウトの“恐ろしい手練手管”》有名国立大学に通う小西木菜容疑者(21)が“薬物漬けパーティー”に堕ちるまで〈レーサム創業者・田中剛容疑者、奥本美穂容疑者と逮捕〉
NEWSポストセブン
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
悠仁さま、筑波大学で“バドミントンサークルに加入”情報、100人以上所属の大規模なサークルか 「皇室といえばテニス」のイメージが強いなか「異なる競技を自ら選ばれたそうです」と宮内庁担当記者
週刊ポスト
前田健太と早穂夫人(共同通信社)
《私は帰国することになりました》前田健太投手が米国残留を決断…別居中の元女子アナ妻がインスタで明かしていた「夫婦関係」
NEWSポストセブン