久々のキムタク主演ということでまずは興味津々、見てみようという人も序盤は多かったはず。しかし中盤~終盤にかけても高い視聴率を維持。物見遊山の視聴者を物語の中に引きずり込みました。主人公は挫折した天才シェフ尾花夏樹(木村拓哉)。再生をかけ「グランメゾン東京」というレストランでリベンジに挑戦。一人また一人と優秀なスタッフを増やしチームの絆は深まっていく。そして「世界最高の三つ星レストランを作り上げる」を目標に、いよいよ大勝負に挑む…。
『同期のサクラ』と比較してみれば、物語の構成はシンプル。ただ、凝って作り込んだ突出した要素もありました。例えばシズル感満載の調理シーン。素材の香りまでが画面から伝わってくるリアルさ。レシピを文字で映し出したり、器も色彩も工夫されビジュアルとしても美しい。料理上手のキムタクが光るような演出で、ドラマの大きな魅力になっていました。
両者を眺めていると、一つ不思議なことに気付きます。なぜ、設定も配役も舞台も違うオリジナルのドラマなのに、共通のテーマが横たわっているのか。いったい何ゆえに2つのドラマは、「仲間」という主軸において共通していたのでしょうか?
さまざまな矛盾を抱え悩みながら生きている人がたくさんいる時代。できればサクラや尾花のように、忖度なく自分の道を突き進みたい。しかし現実は壁だらけで、なかなか難しい。
今やSNSでポチッとすれば、すぐに人とつながることができる。見知らぬ人でも一つのテーマの元、即座に集まることが可能になった。人の輪は生まれる。しかし、それはどこかはかない。すぐに集まれるし、すぐにバラバラになる。「仲間」と呼べるほどの体験や感動をシェアした相手「ではない」。
という「薄味」のつながりの中に生きる現代人にとって、ドラマに描かれていた熱くて泥臭くて喧嘩や怒鳴り合いをしながらもしっかりつながり支えあっていく「仲間」は、まぶしく輝いていて心を揺さぶられる。憧れの人間関係だったということかもしれません。
そう、今年の流行語大賞は「ワンチーム」です。あらためて、「ドラマは社会を映す鏡」ということを、オリジナルの話題作品から思い至りました。