しかし、決定的な問題がある。その先にあるのは「あきらめ」と「絶望」なのだ。ミレニアル世代(注・平成初期生まれ)にあるのは「失われた未来」だけ、と木澤氏は言う。2018年の話題の書『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』でノア・ハラリが説いてみせたように、ごく一部の富裕層がカネと技術をほしいままにし、それ以外のわれわれは文化に力や希望があった時代のノスタルジーに浸りながら、AIにこき使われる奴隷として生きていかなければならないのだろうか。
それでも、と木澤氏は英国の言論人の言葉を借りる形で、こんなメッセージをつぶやく。「私たちは未来を発明しなければなりません」。富の一極集中やAIによる支配は仕方ないとため息をつくのではなく、未来の創造を。それは私たち昭和世代に課せられた最後の仕事だろう。
※週刊ポスト2020年1月3・10日号