事件の舞台になったゲームアプリ『人狼ジャッジメント』は、参加者の中に潜むオオカミ役を当てる人狼ゲームの一種で、参加者同士のコミュニケーションが欠かせない。そのためにチャット機能がさかんに利用されるのだが、書類送検された高校生はそこに大量のスタンプや卑わいな言葉を書き込むなどしたという。ゲームに勝てない腹いせからの行為だったというが、負けたからとゲーセンで騒いで暴れるようなことを匿名だからとやってしまったのだろうか。
落ち着いて考えたらやらないような迷惑行為を、ゲームのチャットでだけ繰り返す人たちがいるのは前述の通りだ。そして、プレイヤーにとって対策が遅々として進まないと感じられるのには、いくつかの理由があると中島弁護士は語る。
「チャットで被害を被った人が申し立てをするとき、まずゲーム内の通報機能を利用すると思いますが、それだけでは止まない場合の相談を受けることがあります。そのとき、運営元が海外にあるアプリゲームだと、対応がとても遅いのです。プレイヤーからみれば、日本語にローカライズされているゲームなら日本に少なくとも支社くらいあると思うかもしれませんが、最近は日本に関係する法人がまったくないけれどゲームは日本で大ヒット、というアプリもたくさんあります。今後は、そういったアプリ内での違法行為や、ゲーム内のチャットで起きている不正・不法行為にどのように対応していくかが課題でしょう」
物心ついたときには当たり前にスマホがあり、アプリゲームで遊ぶ環境で育ってきたいまの子どもたちにとって、それが安全かどうかという判断基準はない。また、ネット上でのコミュニケーションはリアルの交流と同じくらい重要なものなので、そこで傷つけられたら実生活にも大きな影を落としかねない。運営責任を求められる仕組みを構築できないものだろうか。