世紀は前述のように百年単位。千年紀は千年単位。世紀は序数詞だからゼロ世紀はなく、一世紀から始まる。千年紀も序数詞だからゼロ千年紀なんてあるはずはなく、一千年紀から始まる。三九五年のローマ帝国の分裂や九六二年のオットー大帝戴冠が一千年紀。一七八九年のフランス革命や一九四一年の真珠湾攻撃が二千年紀。そして二十一世紀の今は三千年紀なのだ。
本文中の誤用なら増刷時に訂正もできようが、書名そのものが誤用では訂正もできない。見田・大澤師弟は大恥を天下にさらしたことになる。しかし、不思議なことに、誰もこれに触れようとしない。
古いスクラップ帖に見田宗介のこんな文章を見つけた。一九八五年十月二十八日付朝日新聞の「論壇時評」だ。「気に感応した胎児」と小見出しが付く。
「出産直前になっても頭を下にしていない胎児は、難産となるが、母親が気を整えて胎児に話しかけ」ると「グルッとまわって自分で位置を直すことが多い」「〔母の〕〈気〉に感応しているのだ」
お母さん、すごい。赤ちゃん、えらい。偉大なる神秘の力。でも、基数詞と序数詞の違い、紀年法のイロハを知っていた方が、もっとえらいと、私は思う。
●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。近著に本連載をまとめた『日本衆愚社会』(小学館新書)。
※週刊ポスト2020年1月3・10日号