◆仕事で成果出せなければ「悪しき前例」に
最後に、3番目のポイント「仕事で成果を出すことができるか」について。他に掲げた2つのポイントが実現できたとしても、仕事で成果を出せなければ、元も子もなくなる。先ほど述べた、男性が育休を取得しやすい組織環境の構築も、仕事での成果につながらなければ意味がない。
気候変動への対応や福島の復興など、重責を担う環境相が育休取得したために成果を出せなかったとなってしまえば、育休取得したことが悪しき前例として人々に記憶されてしまう。それは社会に対するマイナスのメッセージになりうる。
最低限、“育休取得しても成果を出した”と言われなければならない。理想としては、成果はしっかりと出したうえで、育休取得は社会で当たり前のことになり、忘れられることだ。出された成果の中に、“育休取得したからこそ出せた成果”が含まれていれば最高だ。
私は4人の子の父親だが、育休は取得しなかった。妻との話し合いの中で、家庭運営上それがベストな体制だったこともあるが、およそ18年前、妻のお腹に長男の命が宿った頃の私には、恥ずかしながら育休を取得するという発想自体がなかった。
しかし、時代は変わりつつある。絶大な発信力を持つ小泉大臣が育休取得する意義は大きい。環境省職員をはじめとする周囲の方々は、その意義を理解し、古い価値観や色眼鏡を取り払い、小泉大臣を支えていただきたいと思う。
最近、男性の育休取得が議論されるようになって、私に育休をとって欲しかったかと妻に尋ねたことがある。帰ってきた答えは、「そのほうが楽だったかもね」というものだった。妻も納得していたはずだと考えていた私は驚いたが、その後に続いた言葉でハッとさせられた。
「私のことじゃないよ。あなたが楽だったんじゃないのかな? 特に双子の時は」
言われて思い出したのは、育児が大変だった頃に味わった帰宅後のしんどさだ。特に下2人の双子の兄妹が生まれた時、妹の方は心停止状態だったため、すぐに救急車でNICUに運ばれた。一方、仕事はストレスフルな環境で残業も多かった。
帰宅したらすぐに車で妻が入院している病院に寄って搾乳した母乳を受け取り、双子の妹が入院するNICUへ直行。床につく頃には深夜2時を回っているという日々がしばらく続いた。眠気と疲れでハンドル操作を誤りそうになったことも度々あった。
その繰り返しで、乗り切れたのが不思議なほど心身が疲れ切ってしまった。もし当時の私が育休を取得していたならば、状況は全く違っていたはずだ。
小泉大臣の育休取得は、世の中を変える大きな一歩になる可能性を秘めていると思う。夫の育休取得を社会の当たり前にするきっかけとして、まずはその育児ぶりに大いに期待したい。
ただ、当然ながら育児は2週間で終わる訳ではない。小泉大臣には育休を取得した後も含めて、父親としての新しい理想像を示していただけたらと切に願っている。