◆男性の育休取得義務化は“劇薬”
一方で、育児という時間が幼い子どもと触れ合う貴重な期間であることを大いに楽しんでいただきたいとも思う。妻が一人で育児を抱えてしまう“ワンオペ育児”は、育児を辛いものにしてしまう。そもそも育児は妻が行うものだとする風潮を変えなければならない。夫が育休を取得する意義には、そんな状況の解消も含まれている。
子どもが小さい時期は短い。夫婦がともに育児に携わり、その貴重な時間を子どもと過ごすことで得られる喜びは一生の宝物になる。育休を取得することによって、その喜びをより深く感じられる機会としていただきたい。
そして、忘れてはならないのが、妻のキャリアを尊重する視点だ。小泉大臣自身も首相候補として期待されているが、妻の滝川クリステルさんも才能溢れる方だ。今後どのようなキャリアを歩みたいかについて夫婦で話し合い、互いに尊重し支えあう中で育児や家事のあり方のバランスをとっていくことが大切だと考える。
一方で、環境省という組織の長である小泉大臣として重要なポイントだと考えるのが、2つ目に掲げた「育休が取りやすい組織環境を構築できるか」だ。
そもそもの話、男性が育休取得しづらい原因の多くは、取得しづらい“環境”にある。育休を取得したいと考えている男性は少なくないのに、この環境という敵が障壁となっている。その根底には、“男性が育休を取ることはない”という暗黙の前提の下に組織を回そうとする考え方がある。
いま検討されている男性の育休取得義務化は、そんな“前提”を打ち壊すために必要な劇薬なのだと思う。本来は育休を取得するか否かは個人の意思に委ねられるものであり、義務化するべきものではないはずだ。それでも義務化の必要性が取り沙汰されているのは、そこまでせざるを得ないほど、“前提”が強固だからに他ならない。
組織の長である小泉大臣が、自らの育休取得を通じてその“前提”を取り払った組織作りを行えば、男性が育休取得しやすい環境が生まれることになる。
そんな組織を作るためには、ただ待機するだけのような無駄な仕事はなくす、不要な会議はなくす、オフィスへの出社義務をなくす、誰かが休んでも仕事がカバーできるよう業務や判断基準を整理してマニュアル化する、など仕事の取り組み方自体を変えなければならない。その決定は組織のトップにしかできないことだ。
テクノロジーが進化し、テレビ電話などがあれば世界中どこにいてもかなりの業務がこなせるようになってきている。規程によってその場にいなければならない義務でもない限り、大胆に仕事の仕方を変えることは意思とアイデアさえあれば可能なはずだ。“環境”相である小泉大臣には、環境省を新しい組織環境モデルにする取り組みを期待したい。