丸子中央病院。晴れていればバルコニーで景色を見ながら食事ができる(写真は山田さんの著書『日本一おいしい病院レストランの野菜たっぷり長生きレシピ』より。撮影/泉健太)

「最初は、接客を1年担当しました。今振り返ると、それはとても貴重な経験でした。『料理人』という職業は、ただ厨房で料理をしていればいい仕事ではなく、お客さまあっての仕事です。

レストランで働くということは、お客さまが何を望んでいらっしゃるのか、どうしたら喜んでくださるのか、そういうことに気づくことが重要です。それによって自分が何をすべきか、判断できるようになっていくのだと思います。それは、調理場に入っても変わらないということを、この時学びました」

 石鍋シェフは、「本質的なあたたかさ」を追求する人だったと山田さんは言う。

「フレンチは見た目を大事にします。となると、飾りつけにばかり注目がいってしまうことも多い。でも、石鍋シェフは表面には見えないその奥にあるもの―料理人がどういう思いで作っているか、という“あたたかさ”を大事にしていました。“それは食材の使い方や調理方法に表れる”と。そしてそれが欠けていると、見抜いてズバッと指摘するんです。本当に勉強になりました」

 1年が過ぎ、ホールから厨房へ。その後、『クイーン・アリス』から研修という形で本場フランスに修業に向かう。行き先は、フランスの南西部。小さな村のホテル内レストランで三つ星を獲得したミッシェル・ゲラールさんに師事するためだ。ゲラールさんは、フレンチの新潮流・ヌーベルキュイジーヌの創始者の1人。「おいしく食べても太らない料理」で一世を風靡したシェフだ。

「ゲラールさんは、従来のクリームとバター、ソースたっぷりの“重いフレンチ”ではなく、野菜の味や素材を生かしてちょうどいいものに仕上げる“軽いフレンチ”を生み出した人です。

 この人の下で、半年修業しました。ゲラールさんは、いいところを強調してさらによく見せるのがとてもうまい人で、私もいろいろな面で影響を受けています」

 1年半後に帰国した山田さんは、『クイーン・アリス』の料理長や、系列店を立ち上げる際の料理長を歴任する。

山田さんが考案した、キャベツと肉だねを炊飯器に重ねて入れるだけで作れる「キャベツケーキ」(写真は山田さんの著書『日本一おいしい病院レストランの野菜たっぷり長生きレシピ』より。撮影/泉健太)

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