こうして、ブランド戦略の見直しや市場(需要)動向に照らした数学的な戦略策定を駆使して、次々と企業ブランドを蘇らせていく森岡氏。西武園ゆうえんちは同業であるUSJで培った再建ノウハウがあるだけに“お手の物”なのかと思いきや、今のところどうやら苦戦も強いられているようだ。
「西武園ゆうえんちのリニューアルは、並々ならず難易度が高いプロジェクト。今の市場構造や消費者の頭の中にあるイメージ、そして西武園が持っている遊具、アトラクション、イベント、運営能力などのアセットを総合的に考えたとき、ここを持続可能な事業に転換していくのは、かなり大きな挑戦です」
1月23日に行われたリニューアル着手会見でこう話した森岡氏。再建にかける総事業費(投資額)が約100億円というのも、高いハードルのひとつとなっている。
「消費者の中で(西武園の)古さがマイナスに評価されがちなので、その頭の中をどう変えるか。高性能やジェットコースターを入れればすぐに400億、500億円とかかってしまいますし、所沢はそういうアトラクションをドーンと作って持続させるような商圏でもない」(森岡氏)
会見中、「需要よりも大きく投資してしまうのが失敗の本質。そこを厳に戒めている」と強調した。
「森岡氏が会社名を『刀』にしたのは、“ムダをそぎ落とし、企業が本当にやるべき戦略を形にする”との意味合いが込められている。そのために必要な道具の象徴が刀だった。選択と集中を繰り返して、小さな投資で大きな成果を生み出すのが、彼の真骨頂でもある」(ジャーナリスト)