さらに、騎手が促してもいないのに目一杯走る馬。調教師から「強めに」との指示もあるようだが、騎手の捌きを見れば息が合っていないと分かる。道悪では脚元を気にする馬とそうでない馬の差が出る。初ダート、初芝のときほど脚元への意識を注視したい。
なにかが引っかかったら思い切る。残った馬が1頭なら単複、2頭なら馬連。3頭でも馬連と薄めに3連複。単勝50倍なんてオッズが残っても決然と行く。
よく、3連単の高配当決着後に「アレは買えないよなぁ」などという声を耳にするけど、買えない馬券などないのである。
じゃあ、全部怪しいと思ったらどうすんだ。じっとペンをしまうのです。どれだけ自分の感性を信じ切れるか。競馬はその勝負でもある。
「GIでも?」と問われれば……だいじょうぶ。GIで全馬怪しいなんてことはない。クラスが上がれば上がるほどしっかりと躾けられていて、隙を見せる馬こそ少ない。どの馬も走りそうに見えるから、買い目も増えてしまうのだった。
●すどう・やすたか 1999年、小説新潮長編新人賞を受賞して作家デビュー。調教助手を主人公にした『リボンステークス』の他、アメリカンフットボール、相撲、マラソンなど主にスポーツ小説を中心に発表してきた。「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆。
※週刊ポスト2020年2月7日号