国内

新型コロナ、自殺した職員らに帰国者から寄せられた苛烈怒号

男性職員が自殺した“現場”。関係者は「全く人が足りない」と(共同通信社)

 埼玉県和光市の緑豊かな一帯にある国立保健医療科学院。保健、医療、福祉に従事する職員の人材育成などを行う同科学院には、7階建ての受講生用寄宿舎がある。

 通常は研修中の地方自治体職員などが宿泊する施設だが、現在は新型コロナウイルスが猛威を振るう中国・武漢からの帰国者が、一時的に身を寄せている。2月1日午前10時15分頃、同科学院周辺に救急車のサイレンが鳴り響いた。

「ドサッという音を聞いた施設関係者が、寄宿舎近くで倒れている血だらけの男性を発見。すぐに119番通報しましたが、男性は搬送先の病院で死亡が確認されました。遺書は見つかっていませんが、遺体の状況から寄宿舎の上階から飛び降りたとみられています」(全国紙社会部記者)

 死亡したのは、内閣官房の男性職員A氏(37才)。

「警視庁から内閣官房に出向していた男性で、帰国者の滞在受け入れ要員に抜擢されていました。本人はまさか新型コロナウイルスの最前線に立つとは思っておらず、ここ数日は動揺もあり、心ここにあらず、という様子だったそうです」(前出・全国紙社会部記者)

 A氏が自殺した当時、この科学院には政府が派遣した第三便のチャーター機で1月31日に帰国した149人のうち、98人が滞在していた。

「A氏は1月31日から施設に泊まり込み、過酷な勤務状況が続いていたようです。自殺と受け入れ業務の因果関係は不明ですが、混乱を極める現場で大きなストレスを抱えていたのは間違いないようです」(前出・全国紙社会部記者)

 帰国者のメンタルも限界に。怒号が飛び交い、恐怖さえ感じる現場だったという。

 武漢からのチャーター機が帰国を始めたのは1月29日。第一便で206人が帰国して、ウイルス検査後に191人が千葉県勝浦市にある勝浦ホテル三日月に滞在した。

「ところが部屋は140室しか用意されておらず、2人1部屋を強いられた帰国者もいた。そのうち2人に新型コロナウイルスの陽性反応が出て、『感染者と非感染者を相部屋にするなんておかしい!』と、怒鳴り声も聞こえました」(前出・全国紙社会部記者)

 制約の多さに帰国者から不満が途絶えることなく続く。

「帰国者はホテルの居室で終日過ごすよう伝えられ、部屋のカギを受け取れませんでした。“軟禁状態”といえるかもしれません。また、衣服は客室内の洗面所で洗うよう求められ、食事は弁当支給でした。こうした対応に不満を抱きクレームが噴出して、受け入れ現場は殺伐としていました。責めるほこ先は全て職員に向かってしまった」(前出・全国紙社会部記者)

◆「人権無視か!」

 世間の視線も厳しかった。最初のチャーター機では、思いもよらぬ「主張」をする帰国者も現れた。2人の帰国者が帰国後のウイルス検査を拒否し、強引に自宅に戻ったのだ。

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン