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2020.02.14 16:00  週刊ポスト

【著者に訊け】話題作連発の宇佐美まこと氏『黒鳥の湖』

 さらに例の連続殺人事件だ。実は複雑な家庭に育った彼には非行歴があり、紆余曲折の末に腰を落ち着けたのが、八木が営む興信所だった。その調査員時代に、娘を監禁して酷い目に遭わせた犯人を探してほしいという老人〈谷岡〉の依頼を担当したのだが、その時に聞いた話が「肌身フェチ」の手口と瓜二つなのだ。実は18年前のこの一件を、彼はろくに調べないまま、なんと伯父を犯人にでっち上げ、嘘の報告をしたのだ。その結果、伯父は何者かに殺されてしまう。

 全ては遺産を無事相続し、由布子との結婚を義父母に認めさせるためだった。だが、そのせいで当時の犯人が野放しになり、罪もない女性に再び牙をむいているとしたら──? そんな中、不登校や非行を繰り返していた美華までが、姿を消してしまうのである。

◆畏怖の感情が歯止めになる

 主人公は読者が乗り込む船。その船頭が姑息な伯父殺しを企て、偽りの幸福に安住していた事実はしかし、その後に待つさらなる衝撃的展開の序章でしかない。

「私は別に主人公が潔白である必要はないと思うし、誰しも人に言えない過去ぐらいありますよね。だからこそ彼はどうするんだろうという部分に牽引されて読んでもらえたら嬉しいです。周囲の裏の顔も徐々に明らかになる中、彼が本当に守りたいものを選び取る物語にしたかった。しかも今回はそこに宗教が絡むのですが、何かに縋り、救われたいと思う感情にも、私は結構怖いものが潜んでいる気がするんです」

 妻の友人に誘われて通い始めた北千住の寺では、住職の後妻の〈大黒様〉と息子の〈若院様〉が瞑想の会を催し、特に過去に怯える彰太には宇宙の理を整然と説く若院の〈自因自果〉という言葉が胸に響いた。

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