伊吹さんはそういう真紀が好きだという。彼女はモンスターではなく、誰の中にも同じものはある。だから真紀の心の動きをていねいに追いかけていった。
ホームスパンの取材で盛岡を訪れて初めて知ったのは、街に根付くコーヒー文化だった。
「歩いているとコーヒーのいい香りがするんですよ。自家焙煎の喫茶店がいくつもあるんです。地元の人の仕事の息抜きの場は私にとって取材の楽しみになりました。取材で触れた街の魅力がそのまま小説の中に入っています。本を片手にコーヒー屋さんめぐりをしていただけたらうれしいですね」
名物の「チロル」のチーズケーキを堪能し、「うまいコーヒーの陰にうまい菓子あり」と言う伊吹さん。作中には実在する店が登場し、喫茶店のなごやかな雰囲気が物語をあたたかく彩っている。
◆取材・構成/仲宇佐ゆり
※女性セブン2020年2月27日号