だが一方で、ネットでの江頭は昔から高評価である。江頭2:50の伝説をまとめた有名なテンプレートがあり、それが口伝えのように広まっていった。テレビで見たことはないが、その伝説だけは知っている人も多い。元来、ネットとの相性は良い芸人であった。
それを受けてだろう、『エガちゃんねる』の3本目の動画はネット上で噂されている江頭2:50の名言を検証する企画だった。疑わしい数々の名言を聞いた江頭は「ネットの世界ってギャップを楽しんでいると思うんだよね」と分析。破天荒な芸風の江頭 2:50に美しい名言を言わせることにおかしみがある、と話す。
確かに近年、ネガティブなキャラクター性で売れていたタレントがポジティブキャラに転向することは多い。筆頭が出川哲朗で、女性週刊誌の名物企画「抱かれたい男ランキング」とあわせて実施される「抱かれたくない男」のタイトルホルダーとして人気を集めてきた。「抱かれたくない男」としての人気は今でも不動のようだが、昔と比べた際、好感度は段違い。テレビから垣間見える出川の気づかいに視聴者が反応する時代となった。タレントの「神対応」がしょっちゅうネットニュースになっている。今のタレントは芸と共に人間性も問われている。
人間性といった部分において、江頭ほど厚みのある芸人は多くない。それを証明するかの如く、『エガちゃんねる』のメッセージ性は強い。1本目の動画の冒頭、彼はカメラに向かってこう叫んだ。
「死にたくなったらコレを見ろ!コレを見たら死ぬのがバカバカしくなるから!」
江頭は視聴者に苦しいことがあっても「生きろ!」と伝える。普通の人が言えば、鼻で笑われるセリフだ。しかし、かつての人気番組『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ)で「笑いのためなら死ねる数少ないサムライ芸人」と呼ばれた江頭2:50が言うなら、信用できる。バラエティ番組の「水中息止め企画」で4分13秒間潜り、失神したこともある彼の言葉は重く深い。
また、多くのタレントを悩ませるアンチが少ないことも江頭の強み。アンチの多くは嫉妬といった感情から生まれる。非難する対象にどこか羨ましさを持つ人がアンチとなる。僕もテレビで楽しそうにしているタレントやYouTuberを観て無責任に「楽に稼いでいいなぁ……」と思うことがある。楽勝にやっているように見せることも芸のうち、と気づかない。能力以上の評価を受けている、と勘違いしてしまう。そして妬み、嫉む感情がわいてきて、昔ならテレビの前で、今ならネットで好き放題な言葉を投げつける。