ライフ

新型コロナ禍 日本に蔓延する「体育会系ウイルス」との相関

ドイツ出身のエッセイスト、サンドラ・へフェリン氏

 確かに政府の対応は遅きに失しているが、問題はそれだけでもないだろう。新型コロナウイルスに揺れる日本社会について、コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
 新型コロナウイルスをめぐる騒動が、たいへんなことになっています。ひとりひとりの用心と対策が大切なのは言わずもがな。それはそれとして、コロナ関連のニュースを見ていると、「この光景はどこかで……」と既視感を覚えることがあります。

 ノロくてピントがずれている政府や役所の動き、実際の効果は二の次で「いちおうやりました」というポーズを取りたいだけの対応、「自粛」を求める空気と「不謹慎狩り」の盛り上がり……などなど。このあたりは、もはや日本のお家芸と言っていいでしょう。

 なぜ同じことが繰り返されるのか。先日、なるほどそういうことだったのかと膝を打つ本が出ました。日独ハーフのエッセイストで多くの著書を持つサンドラ・ヘフェリンさんの最新刊『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)です。子ども時代は日本とドイツを行き来し、学校を卒業してから20年以上ずっと日本で働いているサンドラさんに、「体育会系」がどんなふうに日本を蝕んでいるかを聞きました。

「新型コロナウイルスの拡大はもちろん深刻です。それとは別に、日本にはもともと『体育会系ウイルス』が蔓延していて、今回のような問題が起きたときには、そのウイルスが事態をより悪化させているんじゃないでしょうか」

 この本で言う「体育会系」とは、スポーツをしているかどうかとは関係ありません。現状に疑問を抱くことを許さず、とにかく「やればできる」という根性論を押し付けて、空気を読んでまわりに合わせることを求め、うまくいかなかったら「お前の頑張りが足りない」と個人の責任にしてしまう構造のこと。日本に蔓延しているそんな構造が、いかに学校や会社をブラックにし、女性に無理を強いる社会や、みんながお互いに足を引っ張り合う社会を作っているかを解き明かしています。

「ダイヤモンド・プリンセス号で業務にあたっていた厚生労働省などの職員が、ウイルスの検査を受けずに職場に復帰したというビックリな報道がありました。検査をしなかったのは『陽性者が多く出た場合の業務への影響などを考慮した』からだなんて、呆れて声も出ません。まさに日本の組織の体育会系っぷりを象徴する出来事だと思います」

 その後、批判の影響で(?)何割かは2週間の自宅待機にしたようですが、実際に職員の中から感染者が確認されました。下船した人をバスで駅まで運んで、「あとはこっちの責任ではない」とばかりに、そのまま公共交通機関で帰したことも問題視されています。

「新型コロナウイルスが日本に入ってきた最初の頃は、熱があったのに無理に出張に行った会社員がいたことも話題になりました。日本には『風邪ぐらいで会社を休むな』『風邪は病気のうちに入らない』という風潮があります。今の時点でも、少しぐらい熱があってもそれを隠して出社している人はいるでしょう。仕事がいちばん大事、何があっても会社や同僚に迷惑をかけてはいけない、ほとんどの人はその前提から抜け出せません」

関連キーワード

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン