◆加藤さん? 佐藤さん?
難聴は大きくわけて「伝音難聴」と「感音難聴」の2つのタイプに分類される。『あぶない! 聞こえの悪さがボケの始まり』の著者で、川越耳科学クリニック院長の坂田英明医師が解説する。
「伝音難聴とは、音(空気の振動)の通り道である外耳・中耳のどこかに障害が生じたことで聞こえにくくなる状態を指します。テレビの音量を上げないと聞こえないといったように、耳の中で音が小さくなってしまうのが特徴。ガサガサ、ザーといった異物があるような低い耳鳴りがすることもあります」
原因としては、耳垢が詰まりすぎた「耳垢塞栓」や、細菌やカビの感染による「外耳炎」、細菌やウイルスによって引き起こされる「中耳炎」などがある。服薬や手術などで原因を取り除ければ、聴力は回復するケースが大半だという。
「一方、感音難聴は、音を感じて電気信号に変える内耳や、聴覚の神経そのものに障害が発生するタイプです。雑踏の中での会話が聞こえにくくなるなど、言葉の聞き分けが難しくなることが特徴です。治療によって完治することはほとんどありません」(同前)
感音難聴は、内耳のむくみが原因で起こるメニエール病や、抗がん剤などの薬の副作用によって生じることがある。
「加齢に伴って進行する老人性難聴は、この感音難聴であるケースが多い。老人性難聴は65歳から増加し、65歳以上では25~40%、75歳以上では40~66%、85歳以上に至っては80%もの人が難聴です。ただ、老人性といっても個人差があるので、早い人では40代から聴力の低下を感じる人もいます」(同前)
特徴としては、高い音から聞こえにくくなる。そのため、「か行」「さ行」「は行」などの子音は聞こえなくなっていき、「加藤さん」と「佐藤さん」、「洗う」と「笑う」などが聞き分けられなくなる。
だが、言葉が聞き取りにくくなっても、目覚まし時計のアラームや車のクラクションといった物音は正常に聞こえるといったケースが多い。そのため、本人のみならず周囲の人も気づかないうちに難聴が進行していることがあるのだ。
※週刊ポスト2020年3月20日号