カメラの太さの違いによる“画質の差”について、川田医師はこう指摘する。

「2002年頃に経鼻内視鏡が登場した当時は、たしかに視野角も画質も悪かった。しかし、飛躍的に画像が良くなり、最新型の経鼻内視鏡なら、経口内視鏡と遜色のない視野角・画質で観察することができます」

 経鼻内視鏡で「つらい経験をした」という人もいるが、その原因は「手間を惜しんでいるから」だと川田医師は言う。

「経鼻内視鏡の成否は前処置が7割を握っています。前処置のポイントは薬剤を鼻に噴霧して、鼻腔内を十分に拡張させ、粘膜麻酔をしっかり効かせることで、約15分要します。これを簡略化してしまうと、“つらい経鼻内視鏡”になってしまう」

 重要なのは、それぞれのメリットを認識することだと考えられる。前出・水野氏もこう話す。

「睡眠薬を使えば、どちらから入れても楽になる。ならばしっかり見られる口からがいいと思います。しかし検査に2時間程度はかかるので、仕事の合間に検査を受ける人や、検査を受けた後に自分で車を運転して帰らなければならない人は、睡眠薬が使えないので、鼻からのほうが楽でしょう。また、自治体の検診では睡眠薬を使わないことのほうが多いので、この場合も、口か鼻かを選べるのであれば、鼻からのほうが楽だとは言えますね」

 川田医師は「鼻から」と「口から」を棲み分けるべきだとも話す。

「我々“経鼻派”は、『経鼻で発見、経口で精密検査・治療』がベストだと考えています。症状のないうちから受ける胃がん検診や、バリウム検査で引っかかった時の精密検査、胃部症状の原因検査は、経鼻内視鏡がよいでしょう。ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの治療前の精密検査は経口内視鏡の出番です」

※週刊ポスト2020年3月20日号

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