今の時代なら、紡ぎ方や編み方を丁寧に説明してくれる動画サイトも豊富にある。糸紡ぎというとグリム童話とかに出てきそうな大仰な糸車を想像しがちだが、実はそんなものがなくても『スピンドル』という道具を使って、誰でも羊毛から簡単に糸を紡ぐことができる。スピンドルは何千年も前から世界各地で使われている由緒正しい道具だ。通信販売で安価に購入できるし、なんなら割り箸を大きめの石に括りつける等で自作も可能である。
糸紡ぎのほか、フェルトニードルという針で羊毛をちくちく刺し、フェルト人形を作るのも楽しい。もう少し凝ると、石鹸水を使って大きめのフェルトを作り、帽子や小物作りに仕立てることもできる。原料となる羊毛も通信販売などで簡単に購入可能だし、小単位なら手芸店や百円ショップで売っている。羊毛以外に、絹や綿花で挑戦してみるのも楽しいかもしれない。
最近はSNSで愛猫や愛犬の毛を使ったフェルト人形などを見かけることがあるが、実は海外には毛を採取するために品種改良された犬なんていうのもいるので、あながち驚くべきことでもないのかもしれない。何事もチャレンジだ(とはいえ、殺菌等、衛生面にはお気をつけて!)。
それに、基本に立ち返って編み物もいい。家で柔らかい毛糸を手に黙々と編み物をするというのも、見方によってはなかなか贅沢な時間だろう。これから暖かくなる時期に何を、と思われるかもしれないが、素材や編み方を変えれば春夏向けの軽いセーターなども作ることができる。肌寒い時にさっと使えるひざ掛けなんかも手軽で便利だ。
不要不急の外出が望ましくないとされる今こそ、自分の手で何かを作り上げる、というご経験はいかがだろうか。ピンチはチャンス。羊毛を使った手芸でも工作でも、または牛乳を使ったレシピの開発でも、楽しいことはまだまだ探せるのではないかと提唱しておく。〈以下次号〉
※週刊ポスト2020年3月27日号