桟敷席に観客が誰もいないので、土俵の周りに陣取る審判部の親方衆の姿にも目がいく。普段は気がつかないが、錦戸親方(元関脇・水戸泉)や二子山親方(元大関・雅山)がテレビに映らない足元では、あぐらではなく足を伸ばして座っていることや、親方衆が土俵に上がる時のために別の雪駄が用意されていることも見えた。
土俵正面の観客席の右奥には監察委員、左奥には札番の親方が座っている。無気力相撲を防止する役割を担う監察委員は、通常は会場内の観察室から取組をチェックしている。それが無観客ということで、客席に座って土俵を見ているわけだ。おかげで4人の監察委員のうち1人の親方はボードを持って一番終わるごとに何かチェックをしている様子が見える。他の3人の親方は腕組みをして目を閉じていたりする。一番一番、無気力相撲かどうかの議論をしているわけではなかった。
静寂のなかだからこそ、聞こえ、見えてくるものがある本場所となった。