総おどりというネーミングから、すべての踊り子の群舞を想像するが、そうではない。実行委員会はあくまで振興協会独自の総おどりをやめ、4か所の有料演舞場に振り分けてフィナーレを踊る演出方法を取ることにした。振興協会に所属する有名連の連長が振り返る。
「それを無視する形で振興協会は総おどりを強行しました。実際、総おどりは、さだまさしさんの小説を映画化した『眉山』(2007年公開)の撮影でやったところ、“おもしろい”となってやっているだけで、阿波おどりの伝統にもとづいたものではない。それを、阿波おどりの歴史に疎いテレビのワイドショーが大騒ぎして、改革した遠藤市長を“悪者”にしてしまった。総おどりは、あくまで演出の一部に過ぎないのですが…」
なお、踊り子の団体は振興協会だけではない。20弱の有名連が所属する「徳島県阿波踊り協会」や、8つほどが所属する「徳島県阿波おどり保存協会」などがある。14の有名連でつくる振興協会は多数派でもないのだ。
そんな遠藤市長を市議会で厳しく追及してきたのが、振興協会の顧問で、市議会の有力者である岡孝治議員だ。総おどり中止騒動後の2018年9月、「市政の後退と混乱を招いた」として市長に対する不信任決議案を岡議員らが提出した(賛成少数で否決)。
「市長選で遠藤市長の対立候補になった内藤さんは、記者会見で無所属での出馬を強調していました。ただ、振興協会や岡議員の周辺が強力にバックアップしているとされます。公約では阿波おどりについて、『市長が実行委員長に就任し、責任をもって関係団体と調整を図りながら、阿波おどりにかかわるすべての人々が楽しめる阿波おどりにしていきます』としています。つまり、民間委託して実行委員長を降りた遠藤市長の路線を否定し、振興協会などの意向を汲み取る方向性だと読み取れます」(前出・記者)
阿波おどりの大きな連はメンバーが数百人もいて、家族も含めれば数千票も動かすことができるとされる。
「徳島では阿波おどりは特別な存在で、観光業も大きく依存しています。活性化することは、徳島の経済全体にもかかわります。ただ、一部の団体が利益を得て、市民の血税が流れる状態に回帰していいのか、冷静に考える必要があります」(前出・記者)
有権者はどう判断を下すのだろうか。
※女性セブン2020年4月9日号