私はこどものころ、テレビで松竹新喜劇に親しみ、寛美さんの舞台も見た経験もある。この演目もよく知っているつもりだったが、それでも泣けた。再演でも泣けた。ライブで笑わせる志村けんは想像しやすいかもしれないが、実は大いに泣かせてもいたのである。
『志村魂』のラストには、ご存知、変なおじさんも出てきて会場は大盛り上がり。さっきまで泣いたのにな~と思うが、これが『志村魂』のいいところ。「バカ殿様」「変なおじさん」など長く愛されるキャラクターやギャグだけでなく、昭和に愛された芝居が、今も多くの人の胸を打つことを、志村さんはよくわかっていたのだと思う。
『志村魂』は今年の夏も公演予定だった。殿といっしょに会場全員でする「アイ~ン」の挨拶がもうできない。とても残念だ。
「大変なんだよ~」と言いながら舞台を走り回った志村座長。心よりご冥福をお祈りいたします。