インドでも、州保健相が「菜食主義者なら罹患しない」と主張して肉の消費が落ち込んだり、「牛の糞尿を飲んで許しを請えば感染しない」として糞尿を販売し健康被害を出した団体が逮捕されるなどしている。
新型コロナウイルス関連のデマが問題なのは、健康被害をもたらしたり、命を奪うこともある点だ。そのため、世界的に新型コロナウイルス関連のデマなどは厳罰化傾向にある。
台湾では、新型コロナウイルスに関する特別条例案が国会で可決されている。感染症に関するデマやフェイクニュースの拡散をして他人に損害を与えた場合、3年以下の懲役、または、これに300万元(約1000万円)以下の罰金を併科できるようになったのだ。
◆デマの拡散は有罪になることも。必ず真贋の確認を
デマの投稿・拡散は日本でも罪に問われる。2016年の熊本地震では、20歳の男がライオンが街を歩く写真付きで「熊本の動物園からライオンが逃げた」と投稿。写真は過去に海外で撮影されたもので、デマだった。だが、投稿を見てあわてた人たちから熊本市動植物園へ問い合わせなどの電話が100件以上もくる事態となり、男は偽計業務妨害罪で逮捕された。
2019年には、常磐自動車道で起きたあおり運転における殴打事件の際に、「加害者の車に同乗していた女」とされた女性が、デマを投稿・拡散した愛知県豊田市の市議を提訴。市議はFacebookに「早く逮捕されるよう拡散お願いします」と女性の写真を投稿していた。無実の人が犯人であるというデマを拡散した場合、名誉毀損罪などで損害賠償を求められることもあるのだ。
自分で投稿しなくても、拡散だけで責任に問われることもある。2019年9月、元大阪府知事の橋下徹氏がTwitterでデマをリツイートしたジャーナリストを訴えた。リツイートも名誉毀損に当たるとして判決は慰謝料の支払いを命じたが、ジャーナリスト側が控訴。現在も係争中だが、拡散という行為だけでも責任が問えるという判決が出たことは大きい。
ネット、とくにSNSでのデマ発信や拡散は、実に割に合わない行為だということが分かるだろう。ところが、今回の新型コロナウイルスに関しては、またしても、名誉毀損罪や偽計業務妨害罪に当たるようなデマも拡散されている。
「コロナで品薄になる品予測を根拠付きでお伝えします。次は、トイレットペーパーとティッシュペーパーが品薄になります」。
2月末、このような投稿がトイレットペーパー不足の原因として拡散されたのを覚えている人も多いだろう。