もう1つは働いている人も「60歳繰り上げ」を選びやすくなることだ。現在、雇用延長などで働く60代前半の男性の就業率は8割を超えている。しかし、会社員として働きながら年金繰り上げを選ぶと、「在職老齢年金」制度で月給と年金の合計が28万円を上回ると年金がカットされてしまう。
厚労省は「年金は60~70歳の間の好きなときに受給できる制度」と謳っているが、実際には、雇用延長で働いているサラリーマンは年金カットによるデメリットが大きすぎるため、事実上、繰り上げを選ぶことができなくなっていた。
そのデメリットも制度改正で大幅に解消される。60代前半で働きながら繰り上げを選んでも、月給と年金の合計が47万円までは年金カットされなくなるからだ。
「元気なうちにお金を使いたい」「まだ子供の養育費がかかり、60代前半は現役並みの収入がほしい」と考えるなら、会社員として働いている人も、そうでない人も、60歳から年金をもらうことで早めに年金を確保しておく選択は大いにあるだろう。
※週刊ポスト2020年4月17日号