◆一人息子を失い悲しみに襲われても誠実に生きる夫婦を描く中国映画
今回のパンデミックの原因のひとつは、中国共産党という巨大な権力が、武漢の海鮮市場近辺で発生した原因不明のウイルス性肺炎に、きちんと対応できなかったことにあると、ぼくは確信している。習(近平)さんのことも、どうも好きになれない。
こうした失敗はきちんと検証して、次に生かすべきだ。しかし、だからといって、一人ひとりの中国人を非難するような風潮は嫌いだ。トランプ大統領は、新型コロナを「中国ウイルス」と呼んでいる。トランプさんのことも好きになれない。この発言により、アジア系アメリカ人への差別を煽っている。暴言を吐かれ、怖い思いをしたアジア系の人のなかには、自衛のために銃を買う人もいるという。
ぼくは日ごろから、国同士の関係がぎくしゃくしているときでも、せめて映画くらいは見ておこうと思っている。中国映画の『在りし日の歌』は、そんな作品の一つだが、予想以上にすばらしかった。
一人っ子政策が進む1980年代、目覚ましい経済成長を遂げた1990年代、大きな流れのなかで、一人息子を事故で失った夫婦を描いている。友人の裏切り、絶望、次々に襲ってくる悲しみのなかで、それでも必死に誠実に生き抜こうとする庶民の姿が、3時間の長尺で描かれる。映画好きの人は堪能できると思う。
◆とにかく楽しいおばあちゃんのチアリーディングなど