映画といえば、本書の大きな特色は「映画俳優ハナ肇」に多くの頁を費やしていること。クレージーキャッツの名があまりに大きいために、つい見過してしまうが、ハナ肇は実に多くの映画に出演している。ブルーリボン賞の主演男優賞を二度も受賞している。
著者は、評論家にはほとんど語られない喜劇映画を実に丹念に見てゆき、「映画俳優ハナ肇」の功績を顕彰してゆく。正直、ハナ肇が、こんなに多くの映画(大半はプログラム・ピクチュア)に出演していたとは驚く。山田洋次監督の『馬鹿まるだし』など明らかに『男はつらいよ』の原型になっている。生誕九十年の今年、いいハナ肇論が出た。
※週刊ポスト2020年4月24日号