サ高住の新居は大きな道路に面していて、布団どころか洗濯物を干すのも気が引ける環境。でももう母の中には、布団干しをする習慣も記憶もなくなっているので、シーツは定期的にわが家で洗濯し、布団干しは布団乾燥機を使うことにした。驚くことに、母は布団乾燥機を知らなかった。せんべい布団でがまんしていたのも無理はなかったのだ。
引っ越しからしばらくして、母が通販の真新しい布団に慣れた頃、わが家の布団乾燥機を持ち込んだ。轟音とともに掛け布団が持ち上がるのを、目を丸くして、面白そうに見ていた。古風だが、好奇心旺盛で柔軟なのが母の長所だ。
布団が温まったのか、プンとにおいがしてきた。ほんのり母の香りがした。そうか! 昔、太陽のにおいと思っていたのは母のにおいだったのだ。感動する私の横で母が、
「太陽のにおいだね~」と、幸せそうな顔をした。
最近はクリーニング会社がやっている宅配布団クリーニングも利用し始めた。ゴールデンウイーク前のちょうどいま頃、冬の掛け布団や毛布を送るとクリーニングや除菌をして秋まで保管もしてくれる。
緊急事態宣言が発令され、閉塞感はさらに加速。いまのうちに、母の布団を乾燥しておいてあげないと…。
※女性セブン2020年4月30日号