芸能

小松政夫 「師弟関係や徒弟制度は捨てたもんじゃない」

小松政夫が師弟制度の良さを説く

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、運転手兼付き人として、師匠の植木等と過ごした修業時代の日々について語った言葉をお届けする。

 * * *
 小松政夫は一九六四年に運転手兼付き人として植木等に弟子入りしている。今回の取材で小松は、師としての植木の素晴らしさを熱く語った。

「昭和三十九年、病気で休んだ植木等の快気祝いがゴルフ場でありました。政財界にスポーツ界の錚々たる人たちが集まって。

 運転手たちにも専用の休憩所があって、植木からは『俺の名前でサインすればレストランと同じものが届くから、昼はゆっくりしていなさい』と言われていました。でも、そこにはいたくなくて、洗車場へ行って車をピカピカに磨きました。

 帰りに植木を車に乗せようとしたら、凄い人たちが『がんばってね』と手を振っている。すると植木が私を呼んで『ご紹介します。ここにいるのは松崎雅臣といいます。今に大物になりますので、皆さん、お見知りおきください』って言ったんです。松崎雅臣は僕の本名です。

 車に乗ったら『お前、飯食ったか?』って。『ええ、いただきました』『うそつけ。俺の所にツケが回ってこないぞ』『すみません。車を磨いていたもんで、忘れました』と言ったら『俺も脂っこいもの食わされてな。満足に食ってないんだ。蕎麦屋みたいな所に行きたいな』と言うんで蕎麦屋に行きました。

 僕がかけそばを頼んだら、植木は天丼とカツ丼。凄いなと思っていたら、『俺は油もんを食べちゃいけないのに、ついこんなもん頼むんだよな。お前、食ってくれ』って。

 俺に食わせるために頼んでくれたんです。植木は全てにおいて、そういう人でした」

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン