球団史上最低のチーム勝率3割3分1厘に終わった同年、キーオは頼みの綱だった。5月3日に8連敗を止めたのを皮切りに、6度も連敗ストッパーに。7月、阪神は3勝12敗と散々な成績だったが、その勝ち星は全てキーオだった。チーム唯一の2ケタである11勝を挙げ、各球団の主軸打者との対戦成績を見ても、首位打者の篠塚利夫(巨人)は13打数2安打、正田耕三(広島)は11打数2安打、本塁打王のリチャード・ランス(広島)は9打数1安打、打点王のカルロス・ポンセ(大洋)は21打数5安打と、タイトルホルダーを苦しめた。
監督が吉田義男から村山実に代わった翌年も、キーオは孤軍奮闘する。4月14日の巨人戦(甲子園)で新体制の初勝利を完投で飾り、村山監督の涙を誘った。この年もチームで唯一の2ケタ勝利(12勝12敗)を記録し、防御率2.76と抜群の安定感を誇った。規定投球回数を投げた18人のうち、敬遠なしはキーオだけ。各チームの主軸に立ち向かい、落合博満(中日)は11打数2安打、中畑清(巨人)は19打数1安打と見事に抑えている。
来日3年目の平成元年には、8月4日の大洋戦で84球の無四球完投勝利を挙げるなど15勝(9敗)8完投、4無四球試合という数字を残して斎藤雅樹(巨人)、西本聖(中日)、桑田真澄(巨人)、阿波野秀幸(近鉄)、渡辺久信(西武)、星野伸之(オリックス)、西崎幸広(日本ハム)とともに沢村賞候補にリストアップされた。結果的に、20勝(6敗)21完投の斎藤が受賞したが、Bクラスに沈んだチームで数少ない明るい話題となった。
◆シーズン12安打のうち半分以上が長打
打撃の良さも、キーオの特徴だった。2年目の昭和63年には、4月26日の大洋戦(甲子園)で2回に遠藤一彦から先制3ラン、5月22日の巨人戦(東京ドーム)でも2回に加藤初から先制タイムリーを放ち、ともに勝利打点を記録した。
3年目はシーズン12安打のうち、二塁打4、三塁打2、本塁打1と半分以上が長打であり、打点10を叩き出している。年間2本の三塁打は、バッティングも冴えた金田正一(国鉄→巨人)、米田哲也(阪急→阪神→近鉄)、堀内恒夫(巨人)、平松政次(大洋)、松岡弘(ヤクルト)、江川卓、西本聖、斎藤雅樹、桑田真澄(以上、巨人)も達成していない。
キーオは4年目にも6月6日の中日戦で三塁打を放ち、日本球界4年で3本を数えた。過去20年、阪神の投手で三塁打を打ったのは平成14年5月31日のトレイ・ムーア、平成21年10月4日、平成27年5月5日の岩田稔、平成28年4月12日の藤浪晋太郎の4例しかない。