民間の力という点では、クラウドファンディング制度を活用した動きも出てきている。「未来の宿泊に、今払う」をキャッチフレーズに「種プロジェクト」という旅館サポーター制度もスタートしている。「なじみの宿、なじみにしたい宿への支援」を募り、様々な宿泊施設への参加も呼びかけている。
こうした動きについて、高崎経済大学・地域政策学部・観光政策学科教授の井門隆夫氏はこう評す。
「現実的には不特定多数というよりも、“おなじみ”といわれる利用者からの支援が期待できる草の根の仕組みだ。将来の収益を心配する声もあるが、現金収入という点はもとより“収束したら来るよ”という応援メッセージが出口の見えない今こそ必要なのではないか」
多くの宿泊施設で大量キャンセル、新規予約は激減という窮地にある一方で、様々な支援の動きが広がっていることに対し、とある旅館の主人は「これほどまで多くの人々に支えられていることを実感したことは、ある種活況に沸いていたあの頃にはなかった」と話す。人々のリアルな交流が閉ざされ続ける中、地域・ネットで支援の輪は広がっている。
コロナ禍の収束を見込んだ動きも活発になってきている。特に、新規感染者の減少傾向が顕著になってきてからは、休業要請が緩和された地域を中心にさっそく営業再開の動きがみられる。まずは日帰り入浴からと、通常時と同様の対応とはいかないが、一部宿泊営業も食事は部屋出しなど様々な工夫が見られる。
ただ、エリア外からの旅行者による予約が多くを占めるなど、自分の施設から感染者が出たらどうしようといった不安の声もあり、戦々恐々といったところだ。東京からも近く鬼怒川や那須など人気温泉エリアがある地としても知られる栃木県でも、5月11日から休業要請が緩和された。一部営業再開する施設はあるものの、やはり休業を延期するところが目立つ。
たとえば、東京の主要ターミナルから多くの送迎バスを運行している「おおるりグループ」も、鬼怒川や塩原といった栃木県内施設について5月31日まで休業することを公式サイトへ掲載している。
おおるりといえば低料金にて温泉を愉しめることで人気を博するグループ。施設規模も大きなところが多いが、営業再開により特に東京から人々の大移動を誘発させるとの懸念から、“念には念を入れた休業延期”といったところだろう。